試験対策ノート

【会社法・論証カード】司法試験重要条文・定義まとめ

9

第9条(自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任)
自己の商号を使用して事業又は営業を行うことを他人に許諾した会社は、当該会社が当該事業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

「許諾」の意義

  • 明示的なものに限らず、黙示の態様でもかまわない

「誤認」の意義

  • 第三者の信頼を基礎付ける要件であり、善意・無重過失を要する

9条の趣旨

  • 名板貸人が営業主体であるかのような外観を信頼して取引をした第三者の保護

9条の類推適用要件

  • ①営業主体の誤認を生じる外観の存在(看板、営業時間、営業行為等の事情を勘案)②帰責性③取引相手方の誤認

21

第21条(譲渡会社の競業の禁止)
事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から二十年間は、同一の事業を行ってはならない。
2 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。
3 前二項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。

「事業を譲渡」の意義

  • ①一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を譲渡し②これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた事業的活動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継がせ③譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に21条に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいう(最大判昭40.9.22)

109

第109条(株主の平等)
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
3 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。

従業員持株制度との関係

  • 従業員持株制度は、従業員に対する福利厚生、愛社精神の育成などが目的
  • 株主としての地位ではなく、従業員としての地位に基づき支給されるため、株主平等原則には反しない

株主優待制度

  • ①優待の合理的な必要があり②程度が軽微であれば平等原則には反しない

120

第120条(株主等の権利の行使に関する利益の供与)
株式会社は、何人に対しても、株主の権利、当該株式会社に係る適格旧株主(第八百四十七条の二第九項に規定する適格旧株主をいう。)の権利又は当該株式会社の最終完全親会社等(第八百四十七条の三第一項に規定する最終完全親会社等をいう。)の株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与(当該株式会社又はその子会社の計算においてするものに限る。以下この条において同じ。)をしてはならない。
2 株式会社が特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与をしたときは、当該株式会社は、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしたものと推定する。株式会社が特定の株主に対して有償で財産上の利益の供与をした場合において、当該株式会社又はその子会社の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないときも、同様とする。
3 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与を受けた者は、これを当該株式会社又はその子会社に返還しなければならない。この場合において、当該利益の供与を受けた者は、当該株式会社又はその子会社に対して当該利益と引換えに給付をしたものがあるときは、その返還を受けることができる。
4 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与をすることに関与した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役を含む。以下この項において同じ。)として法務省令で定める者は、当該株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。ただし、その者(当該利益の供与をした取締役を除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
5 前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。

「利益供与禁止の例外」の要件

  • ①目的の正当性②供与額が社会通念上許容されるものであること(金額の相当性)③供与総額が会社財産の基礎に影響がないこと(総額の相当性)を満たす場合、許容される余地がある

「最判平18.4.10」のポイント

  • 株式の譲渡は「株主の権利の行使」とはいえない
  • 好ましくない株主の権利行使を回避する目的で、株式を譲り受けるための対価を何人かに供与する行為は、「株主の権利の行使に関し」利益を供与する行為

127

第127条(株式の譲渡)
株主は、その有する株式を譲渡することができる。

127条の趣旨

  • 株主の投下資本回収の方法の確保

130

第130条(株式の譲渡の対抗要件)
株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。

130条1項の趣旨

  • 株主との関係をまとめて処理する会社の事務処理上の便宜を図ること
  • 会社の義務懈怠を株主に負わせるのは信義則違反になること

139

第139条(譲渡等の承認の決定等)
株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
2 株式会社は、前項の決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者(以下この款において「譲渡等承認請求者」という。)に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。

139条の趣旨

  • 会社経営にとって好ましくない者の参加を排除すること

199

第199条(募集事項の決定)
株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
5 募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。

199条の趣旨

  • 資金調達の便宜と既存株主の保護の調和を図ること

「特に有利な金額」の意義

  • 公正な価格と比較して、特に低い金額
  • 公正な価格とは、通常、株式の時価(最も近接した日の株式の市場価格)
  • 株価の9割が一つの基準

210

第5款 募集株式の発行等をやめることの請求
第210条 次に掲げる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、第百九十九条第一項の募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をやめることを請求することができる。
一 当該株式の発行又は自己株式の処分が法令又は定款に違反する場合
二 当該株式の発行又は自己株式の処分が著しく不公正な方法により行われる場合

「著しく不公正」の意義

  • 不当な目的を達成する手段として、募集株式の発行等が利用される場合

314

第314条(取締役等の説明義務)
取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。

「必要な説明」の意義

  • 株主が議題を合理的に判断するのに客観的に必要な範囲での説明(東京高判昭61.2.19)
  • 基準となる株主は平均的な株主(東京地判平16.5.13)

354

第354条(表見代表取締役)
株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う。

354条の要件

  • ①株式会社を代表する名称がある【名称】
  • ②会社が付している【付す】
  • ③第三者の善意【善意】

356

第356条(競業及び利益相反取引の制限)
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号又は第三号の取引については、適用しない。

「ために(1号)」の意義

  • 名義人を問わず、自己又は第三者の計算において、という意味

「会社の事業の部類に属する取引」の意義

  • 「会社の事業の部類に属する取引」とは、競業取引規制の趣旨に鑑み、株式会社と市場において競合が生じるおそれがあれば足りる

「ために(2号)」の意義

  • 自己又は第三者の「名義」(権利義務の帰属が基準)において、という意味

356条の趣旨

  • 事業上の機密や顧客情報に詳しい取締役が会社に損害を発生させることの防止

361

第361条(取締役の報酬等)
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四 報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
五 報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については、当該イ又はロに定める事項
イ 当該株式会社の募集株式 取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
ロ 当該株式会社の募集新株予約権 取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
六 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容
2 監査等委員会設置会社においては、前項各号に掲げる事項は、監査等委員である取締役とそれ以外の取締役とを区別して定めなければならない。
3 監査等委員である各取締役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、第一項の報酬等の範囲内において、監査等委員である取締役の協議によって定める。
4 第一項各号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。
5 監査等委員である取締役は、株主総会において、監査等委員である取締役の報酬等について意見を述べることができる。
6 監査等委員会が選定する監査等委員は、株主総会において、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる。
7 次に掲げる株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第一項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。
一 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの
二 監査等委員会設置会社

「報酬」の意義

  • 職務執行の対価

361条の趣旨

  • 取締役のお手盛り防止

369

第369条(取締役会の決議)
取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

「特別の利害関係を有する取締役」の意義

  • 取締役の忠実義務違反をもたらすおそれのある、会社の利益と衝突する取締役の個人的利害関係を有する者

433

第433条(会計帳簿の閲覧等の請求)
総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主又は発行済株式(自己株式を除く。)の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
2 前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。
一 当該請求を行う株主(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
四 請求者が会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき。
五 請求者が、過去二年以内において、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
3 株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、会計帳簿又はこれに関する資料について第一項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
4 前項の親会社社員について第二項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。

「実質的に競争関係にある事業を営み」の意義

  • 単に請求者の事業と相手方会社の事業とが競争関係にある場合に限られず、請求者が親会社と一体的に事業を営んでいると評価できる場合で、当該親会社が相手方会社と競争関係にあるような場合も含む(東京地判平19.9.20)
  • 「競争関係」とは、現に競争関係にある場合のほか、近い将来において競争関係に立つ蓋然性が高い場合も含む(東京地判平19.9.20)
  • 会社と競争関係を理由に拒絶事由を認めるのは、株主が会社と競争関係にある者であると客観的事実が認められれば足り、会計帳簿等から知りうる情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図は不要(最決平21.1.15)

466

第466条 株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。

466条について

  • 株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる(条文通り)
  • 会社の基礎に根本的変動を生じさせるもの
  • 原則、株主総会の特別決議

467

第467条(事業譲渡等の承認等)
株式会社は、次に掲げる行為をする場合には、当該行為がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならない。
一 事業の全部の譲渡
二 事業の重要な一部の譲渡(当該譲渡により譲り渡す資産の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えないものを除く。)
二の二 その子会社の株式又は持分の全部又は一部の譲渡(次のいずれにも該当する場合における譲渡に限る。)
イ 当該譲渡により譲り渡す株式又は持分の帳簿価額が当該株式会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の五分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えるとき。
ロ 当該株式会社が、効力発生日において当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有しないとき。
三 他の会社(外国会社その他の法人を含む。次条において同じ。)の事業の全部の譲受け
四 事業の全部の賃貸、事業の全部の経営の委任、他人と事業上の損益の全部を共通にする契約その他これらに準ずる契約の締結、変更又は解約
五 当該株式会社(第二十五条第一項各号に掲げる方法により設立したものに限る。以下この号において同じ。)の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。ただし、イに掲げる額のロに掲げる額に対する割合が五分の一(これを下回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)を超えない場合を除く。
イ 当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額
ロ 当該株式会社の純資産額として法務省令で定める方法により算定される額
2 前項第三号に掲げる行為をする場合において、当該行為をする株式会社が譲り受ける資産に当該株式会社の株式が含まれるときは、取締役は、同項の株主総会において、当該株式に関する事項を説明しなければならない。

「事業譲渡」の意義(最大判昭40.9.22)

  • ①一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を譲渡し【おカネを譲渡】
  • ②これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた事業的活動の全部又は一部を譲受人に受け継がせ【事業を譲渡】
  • ③譲渡会社が法律上当然に21条に定める競業避止義務を負う結果を伴うもの【競業避止義務】
  • 譲渡会社の事業再編を意味し、株主の重大な利害に関わる

828条

第828条(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
一 会社の設立 会社の成立の日から二年以内
二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内)
三 自己株式の処分 自己株式の処分の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、自己株式の処分の効力が生じた日から一年以内)
四 新株予約権(当該新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合にあっては、当該新株予約権付社債についての社債を含む。以下この章において同じ。)の発行 新株予約権の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、新株予約権の発行の効力が生じた日から一年以内)
五 株式会社における資本金の額の減少 資本金の額の減少の効力が生じた日から六箇月以内
六 会社の組織変更 組織変更の効力が生じた日から六箇月以内
七 会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から六箇月以内
八 会社の新設合併 新設合併の効力が生じた日から六箇月以内
九 会社の吸収分割 吸収分割の効力が生じた日から六箇月以内
十 会社の新設分割 新設分割の効力が生じた日から六箇月以内
十一 株式会社の株式交換 株式交換の効力が生じた日から六箇月以内
十二 株式会社の株式移転 株式移転の効力が生じた日から六箇月以内
十三 株式会社の株式交付 株式交付の効力が生じた日から六箇月以内
2 次の各号に掲げる行為の無効の訴えは、当該各号に定める者に限り、提起することができる。
一 前項第一号に掲げる行為 設立する株式会社の株主等(株主、取締役又は清算人(監査役設置会社にあっては株主、取締役、監査役又は清算人、指名委員会等設置会社にあっては株主、取締役、執行役又は清算人)をいう。以下この節において同じ。)又は設立する持分会社の社員等(社員又は清算人をいう。以下この項において同じ。)
二 前項第二号に掲げる行為 当該株式会社の株主等
三 前項第三号に掲げる行為 当該株式会社の株主等
四 前項第四号に掲げる行為 当該株式会社の株主等又は新株予約権者
五 前項第五号に掲げる行為 当該株式会社の株主等、破産管財人又は資本金の額の減少について承認をしなかった債権者
六 前項第六号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において組織変更をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は組織変更後の会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは組織変更について承認をしなかった債権者
七 前項第七号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収合併後存続する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収合併について承認をしなかった債権者
八 前項第八号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設合併により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設合併について承認をしなかった債権者
九 前項第九号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において吸収分割契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収分割契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収分割について承認をしなかった債権者
十 前項第十号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において新設分割をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は新設分割をする会社若しくは新設分割により設立する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは新設分割について承認をしなかった債権者
十一 前項第十一号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式交換契約をした会社の株主等若しくは社員等であった者又は株式交換契約をした会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは株式交換について承認をしなかった債権者
十二 前項第十二号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式移転をする株式会社の株主等であった者又は株式移転により設立する株式会社の株主等、破産管財人若しくは株式移転について承認をしなかった債権者
十三 前項第十三号に掲げる行為 当該行為の効力が生じた日において株式交付親会社の株主等であった者、株式交付に際して株式交付親会社に株式交付子会社の株式若しくは新株予約権等を譲り渡した者又は株式交付親会社の株主等、破産管財人若しくは株式交付について承認をしなかった債権者

828条(会社の組織に関する無効の訴え)の趣旨

  • 法律関係の画一確定、法的安定性の確保(一般原則に委ねると法的安定性を著しく反する)

「(設立)無効」の意義

  • 会社成立後の株主にも原告適格を認めている(大判昭7.5.20)

「(株式発行の)無効」の意義

  • 重大な法令・定款違反に限る
  • 募集株式の発行は利害関係人が多数発生し、その効力については法的安定性を重視すべき。さらに取引的行為の色彩が強く、取引の安全性をできる限り保障すべき

829

第829条(新株発行等の不存在の確認の訴え)
次に掲げる行為については、当該行為が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
一 株式会社の成立後における株式の発行
二 自己株式の処分
三 新株予約権の発行

「不存在」の意義

  • 不存在とは、一般的に①新株発行等の外観が存在するにもかかわらずその実体を伴わない場合(物理的不存在)や②実体は存在するものの手続的瑕疵が著しく新株発行等がなされたと法的に評価できない場合(法的不存在)が該当する

830

第830条(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
株主総会若しくは種類株主総会又は創立総会若しくは種類創立総会(以下この節及び第九百三十七条第一項第一号トにおいて「株主総会等」という。)の決議については、決議が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
2 株主総会等の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもって請求することができる。

「不存在」の意義

  • 物理的な不存在だけでなく、決議の手続的瑕疵が著しく、そのため決議が法律上存在するとは認められないような場合を含む【物理的なもの+著しい手続瑕疵】

831

第831条(株主総会等の決議の取消しの訴え)
次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。
二 株主総会等の決議の内容が定款に違反するとき。
三 株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
2 前項の訴えの提起があった場合において、株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。

「特別の利害関係を有する者」の意義

  • 特別利害関係人とは、問題となる議案の成立により他の株主と共通しない特殊な利益を獲得し、若しくは不利益を免れる株主をいう

831条の趣旨

  • 株主の権利を救済しようとしたものではなく、株主総会における決議の公正を担保しようとしたもの

-試験対策ノート