13条
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 |
「幸福追求に対する国民の権利」の意義
- 新しい人権を包括的に保障する規定であり、憲法上の規定のない人権も認められ得るもの
- ただし、既存の人権の価値が相対的に低下する恐れがあるため、人格的生存に不可欠な場合のみ本条文の保障対象とする
14条
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 ② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 ③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。 |
「法の下」の意義
- 法適用の平等だけでなく、法内容の平等も意味する
「平等」の意義
- 合理的な区別を許容するもの
「社会的身分」の意義
- 出生以降継続的に占める地位
19条
第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 |
「思想及び良心」の意義
- 20条、21条1項、23条に対しての一般規定
- 学問・信仰とこれに準じる世界、思想のようなある程度確固とした信条
20条
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。 ② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。 ③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。 |
「信教の自由」の意義
- 戦前、神道が国家的宗教とされ、軍国主義の精神的支柱となった裏で他の宗教は冷遇された歴史的経緯を踏まえ、特に明文で保障された重要な権利
- 精神的自由権の核心をなすもの
「宗教的活動」の意義
- 国家と宗教の関わり合いが相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいうと解する
政教分離について
- 政教分離の原則は、国家の非宗教性、宗教的中立性を保つこと
- 政教分離の目的は、「少数者の信教の自由を確保」「民主主義の確立」「国家、宗教両方の堕落防止」
- 政教分離原則は、国家が宗教とのかかわり合いをもつことを全く許さないとするものではなく、そのかかわり合いがわが国の社会的・文化的諸条件に照らし、相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないと解するべき(判例)
21条
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 ② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 |
「集会」の意義
- 国民が様々な意見や情報等に接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、相互に意見や情報等を伝達・交流する場として必要【意見や情報等に接し、伝達・交流する場】
- 対外的に意見表明するための有効な手段【意見表明に有効】
「表現」の意義
- 表現を通じて個人の人格形成発展(自己実現)に直接関わる重要な権利
「検閲」の意義
- 検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することをその特質として備えるもの
「知る権利」の意義
- 知る権利は、表現の受け手が情報を受領し、かつ請求する自由を有するという憲法21条で保障された権利
- 知る権利の法的性格は、①自由主義的性格②請求権的性格
22条
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 ② 何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。 |
「出入国の自由」について
- 【入国の自由】憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものではない(マクリーン事件)
- 【出国の自由】憲法22条2項にいう「外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限って保障しないという理由はない」(最大判昭32.12.25)
- 【再入国の自由】わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されるものでない(森川キャサリーン事件)
海外渡航の自由について
- 海外渡航の自由は、経済的自由の側面と精神的自由の側面を併せもつ複合的性格の人権
28条
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。 |
労働基本権について
- 労働基本権は、団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)の3権からなり、3権は有機的なつながりをもち、労働者の生活を守るためにそれぞれ独自の機能・意義を有している
- 労働基本権の性格としては、国民一般の権利ではなく、勤労者のみに保障される権利であり、「国家権力からの自由という側面」「民事上の権利という側面(正当な争議行為は民事責任が免除)」「行政的救済を受ける権利という側面」がある
29条
第29条 財産権は、これを侵してはならない。 ② 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。 ③ 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。 |
「財産権」の意義
- 財産権とは、所有権その他の物権、債権の他、著作権等の無体財産権、漁業権等の特別法上の権利などを含む、財産的価値を有するすべての権利
29条1項の趣旨
- 私有財産制を保護するのみならず、国民の個別具体的な財産権をも保護する趣旨
29条2項の意義
- 財産権の内容形成を法律に委ねていることから、原則として立法裁量が広くはたらく
29条3項の趣旨
- 直接には、財産権制限の場合の損失補償を定める規定
- 損失を社会一般の負担に転嫁するという平等原則(14条1項)の徹底及び、29条1項による個人の財産権補償の徹底
41条
第41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。 |
「立法」の意義
- 立法とは、実質的意味の立法
- 「法」とは、一般的抽象的法規範(国民の権利義務を定める法規範だけでなく、民主的責任行政の確保のため、行政組織等についても法律で定める必要性があるというべきであるから)
76条
第76条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。 ② 特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。 ③ すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。 |
「司法権」の意義
- 司法権は、①法律上の争訟について法を解釈適用し②宣言する国家作用である
84条
第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。 |
84条の趣旨(租税法律主義の趣旨)
- 課税が国民の経済生活に重大な影響を及ぼすものであることから、国会の民主的コントロールを及ぼし、国民の租税に対する予見可能性と法的安定性を図ること
「法律」の意義
- 本条の「法律」には条例も含まれる
- 条例が、租税法律主義に違反しないかの判断は、①公課の性質②賦課徴収の目的③強制の度合いなど総合考慮の上、判断
- 条例には、議会の民主的統制が及んでいる
「租税」の意義
- 国又は地方公共団体が課税権に基づき、使用する経費に充当するために強制的に徴収する金銭給付
※84条に関しては、旭川市国民健康保険条例事件(最大判平18.3.1)が重要であるため、当該判例のチェックは必須です。
89条
第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。 |
「宗教上の組織若しくは団体」の意義
- 「宗教上の組織若しくは団体」とは、宗教に関係するすべての団体を意味するものではない
- 特定の宗教の信仰、礼拝又は普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体
「公の支配」の意義
- 法律による通常の規制・監督を受けること(緩和説)
- 経営管理・施設管理・人事等の面で公権力の監督が事業の自主性を失わせるとみられる程度の強い監督(厳格説)
「教育若しくは博愛の事業」の意義
- 人の精神的又は肉体的育成を目指して、組織的・継続的に人を教え導く活動を行う事業
89条後段の趣旨
- 教育等の美名の下に公金支出が濫用されるおそれがあるため、それを防止しようとしたもの(公費濫用防止説)
- 教育等の事業に対する国家の干渉を排除し、事業の自主性を確保するもの(自主性確保説)
92条
第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。 |
「地方自治の本旨」の意義
- 「住民の意思に基づいて行われるという住民自治」と「国から独立した団体に委ねられる団体自治」