試験対策ノート

【民法・論証カード】司法試験重要条文・定義まとめ

21条

第21条(制限行為能力者の詐術)
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

「詐術」の意義

  • 制限行為能力者の他の言動などと相まって相手方を誤信させ又は誤信を強めたものと認められたときも含む
  • 制限行為能力者であることを終始黙秘していただけの場合は含まない

34条

第34条(法人の能力)
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

「目的の範囲内」の意義

  • 「目的の範囲」には、法人の目的を遂行するために直接又は間接に必要な行為を広く含む
  • 「目的の範囲内」か否かは、行為の客観的な性質に即して、抽象的に判断するべき

94条

第94条(虚偽表示)
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

「第三者」の意義

  • 当事者及び包括承継人以外の者で、虚偽表示による法律行為の存在を前提として利害関係に立った第三者

94条2項の趣旨

  • 94条2項の趣旨は虚偽の外観を信頼した第三者を保護すること
  • 「第三者」とは、信頼が保護に値する者

94条2項の類推適用

  • ①虚偽の外観の存在②真の権利者の帰責性③外観への信頼がある場合、94条2項を類推適用

95条

第95条(錯誤)
意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

「表示」の意義

  • 「表示」とは、相手方保護の観点から、相手方に了解されて法律行為の内容となっていることまで要求されるもの

96条

第96条(詐欺又は強迫)
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

第三者」の意義

  • 詐欺による法律関係に基づいて取得された権利について、新たな独立の法律上の利害関係に入った者

96条3項の趣旨

  • 取消の遡及効を制限し、第三者を保護する点

110条

第110条(権限外の行為の表見代理)
前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

「正当な理由」の意義

  • 代理権の存在について、善意無過失

110条の要件

  • ①基本代理権②越権行為③代理人の権限があると信ずべき正当な理由

162条

第162条(所有権の取得時効)
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

「所有の意思」の意義

  • 「所有の意思」の有無は、占有者の内心の意思によってではなく、外形的客観的に決せられるべき者であり、占有取得の原因の客観的性質に基づいて判断されるもの

162条2項の取得事項の要件

  • ①所有の意思を持って②平然・公然と③善意・無過失で④10年間占有すること

177条

第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

「第三者」の意義

  • 当事者及び包括承継人以外の者で、登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者

192条

第192条(即時取得)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

即時取得とは

  • (占有という)権利の外観を信頼した者を保護する制度
  • 公示方法の不完全さを補完するための制度
  • 自動車のように登録制度が完備されていれば認める必要がない(登録済自動車は動産にあたらない)

即時取得の要件

  • ①目的物が動産②前主が無権利者③前主が占有④有効な取引行為の存在⑤平穏・公然・善意・無過失による占有取得

「善意」の意義

  • 平穏・公然・善意は推定される

194条

第194条
占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

194条の趣旨

  • 占有者と被害者等との保護の均衡を図る点

242条

第242条(不動産の付合)
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。

「付合」の意義

  • 動産が不動産と結合・一体化していて、分離復旧が不可能か分離したとしても著しく不利益な状態となること

295条

第295条(留置権の内容)
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

「その物に関して生じた債権」の意義

  • 留置権の成立時点において、被担保債権の債務者と目的物の引渡請求権者が同一人であることが必要という意味

留置権の成立要件

  • ①物の占有②被担保債権と物の牽連性③被担保債権が弁済期にある(1項ただし書)④占有が不法行為によって始まっていないこと(2項)

留置権の本質

  • 物の返還を拒絶し、債務者に心理的圧迫を加え、債務の弁済を促す

370条

第370条(抵当権の効力の及ぶ範囲)
抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第四百二十四条第三項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りでない。

「付加して一体となっている物」の意義

  • 目的物と経済的・価値的一体性を有する物

370条の趣旨

  • 抵当権者に目的物の全経済的価値をまとめて把握させる点にある

401条

第401条(種類債権) 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、法律行為の性質又は当事者の意思によってその品質を定めることができないときは、債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
2 前項の場合において、債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、以後その物を債権の目的物とする。

「物の給付をするのに必要な行為を完了」の意義

  • 持参債務では現実の提供

424条

第424条(詐害行為取消請求)
債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。

「債務者が債権者を害することを知ってした行為」の意義

  • 債務者の行為が「債権者を害することを知って」なされたこと
  • 「必ずしも害することを意図しもしくは欲し」たことまでを要しない

468条

第468条(債権の譲渡における債務者の抗弁)
債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
2 第四百六十六条第四項の場合における前項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、第四百六十六条の三の場合における同項の規定の適用については、同項中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。

「事由」の意義

  • 既発生の抗弁や抗弁権の発生原因だけでなく、抗弁権発生の基礎となる事実まで含む

541条、545条

第541条(催告による解除)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

第545条(解除の効果)
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

解除について

  • 解除により契約は遡及的に消滅
  • 解除の趣旨は、解除権者を双務契約の法的拘束から解放し、契約締結前の状態に回復させる点

545条1項ただし書について

  • 545条1項ただし書の趣旨は、解除の遡及効を制限し、第三者を保護する点
  • 「第三者」とは、解除前の第三者(ただし、登記が必要)

557条

第557条(手付)
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
2 第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。

「履行に着手」の意義

  • 「履行に着手」したとは、債務の内容たる給付の実行に着手すること
  • 客観的に外部から認識しうるような形で履行行為の一部をなし、又は履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をした場合を指す
  • 履行の着手にあたるか否かは、行為の態様、債務の内容、履行期が定められた趣旨・目的等の諸般の事情を総合勘案して決する

608条

第608条(賃借人による費用の償還請求)
賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

「必要費」の意義

  • 必要費は、単に目的物自体の原状を維持し、又は目的物自体の原状を回復する費用に限定されず、通常の用法に適する状態において、目的物を保存するために支出した費用も含む

715条

第715条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

「事業の執行について」の意義

  • 使用者の支配領域内で行われた行為

717条

第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

「瑕疵」の意義

  • 当該工作物が通常有すべき安全性を欠いていること

719条

第719条(共同不法行為者の責任)
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇ほう助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

「共同」の意義

  • 「共同」は被害者保護の観点から柔軟に解釈すべきで、主観的関連協働までは要せず、客観的関連共同があれば足りると解する

719条の趣旨

  • 本来は、各人の与えた損害について、それぞれ別個に責任を負うはずだが、まとめて共同して責任を負わせることで被害者救済を図る点

722条

第722条(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

「被害者」の意義

  • 被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみなされるような関係にある者

761条

第761条(日常の家事に関する債務の連帯責任)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

「日常の家事」の意義

  • 「日常の家事」とは、夫婦が共同生活を営む上において、通常必要な法律行為
  • 「日常の家事」の範囲に含まれるか否かは、共同生活の内部的事情や個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、客観的に、その法律行為の種類、性質等を十分に考慮して、判断すべき

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