28条
第28条(原則) 当事者能力、訴訟能力及び訴訟無能力者の法定代理は、この法律に特別の定めがある場合を除き、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令に従う。訴訟行為をするのに必要な授権についても、同様とする。 |
「当事者能力」の意義
- 当事者能力とは、民事訴訟の当事者(又は補助参加人)となることのできる一般的な資格
29条
第29条(法人でない社団等の当事者能力) 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。 |
29条の趣旨
- 民法上の権利能力がなくても、独立の財産を有して社会活動を行っており、私法上の紛争主体となり得る者について、紛争解決の見地から当事者能力を認める点にある
団体としての実体が認められる要件
- ①団体としての組織を備えていること②多数決の原理が働いていること③構成員の変動が団体の存続に影響を与えないこと④団体としての主要な点(代表の方法、総会運営、財産管理等)が確定していること
30条
第30条(選定当事者) 共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる。 2 訴訟の係属の後、前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定したときは、他の当事者は、当然に訴訟から脱退する。 3 係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者で当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができる。 4 第一項又は前項の規定により原告又は被告となるべき者を選定した者(以下「選定者」という。)は、その選定を取り消し、又は選定された当事者(以下「選定当事者」という。)を変更することができる。 5 選定当事者のうち死亡その他の事由によりその資格を喪失した者があるときは、他の選定当事者において全員のために訴訟行為をすることができる。 |
「共同の利益を有する者」の意義
- ①多数の者が38条前段の関係にあり、かつ②主要な攻撃防御方法を共通にするときに認められる
40条
第40条(必要的共同訴訟) 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。 2 前項に規定する場合には、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為は、全員に対してその効力を生ずる。 3 第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる。 4 第三十二条第一項の規定は、第一項に規定する場合において、共同訴訟人の一人が提起した上訴について他の共同訴訟人である被保佐人若しくは被補助人又は他の共同訴訟人の後見人その他の法定代理人のすべき訴訟行為について準用する。 |
固有必要的共同訴訟の定義
- 判決の合一確定(民訴法40条1項)だけでなく、利害関係人全員が当事者とならなければ当事者適格を欠き、不適法となる訴訟形態のこと
固有必要的共同訴訟の趣旨
- ①重複審理の回避(訴訟経済)②判決の矛盾回避③全員の手続保障
42条
第42条(補助参加) 訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。 |
「訴訟結果」の意義
- 「訴訟結果」とは、判決主文中の判断だけでなく、判決理由中の主要な争点についての判断も含まれる
「利害関係」の意義
- 「利害関係」とは、法律上の利害関係のこと
- 「訴訟の結果」が参加人の私法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがあることをもって足りる
46条
第46条(補助参加人に対する裁判の効力) 補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。 一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。 二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。 三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。 四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。 |
「効力」の意義
- 敗訴責任の公平な分担のため、敗訴判決について、被参加人と補助参加人とを当事者とする後の訴訟では争えないとする効力のこと(参加的効力説)【「敗訴責任の公平な分担」と覚えましょう!】
- 参加的効力は、判決主文に包含された訴訟物の権利関係の存否についての判断だけでなく、判決理由中でされた事実認定や権利関係の存否についての判断にも及ぶ
47条
第47条(独立当事者参加) 訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者は、その訴訟の当事者の双方又は一方を相手方として、当事者としてその訴訟に参加することができる。 2 前項の規定による参加の申出は、書面でしなければならない。 3 前項の書面は、当事者双方に送達しなければならない。 4 第四十条第一項から第三項までの規定は第一項の訴訟の当事者及び同項の規定によりその訴訟に参加した者について、第四十三条の規定は同項の規定による参加の申出について準用する。 |
「訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者」の意義
- 具体的な訴訟において、その既存当事者の訴訟追行の自由を制限することを正当化し得る法律上の利益を有する第三者
「訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であること」の意義
- 本訴請求と参加人の請求が法律上両立し得ない関係にあること
49条
第49条(権利承継人の訴訟参加の場合における時効の完成猶予等) 訴訟の係属中その訴訟の目的である権利の全部又は一部を譲り受けたことを主張する者が第四十七条第一項の規定により訴訟参加をしたときは、時効の完成猶予に関しては、当該訴訟の係属の初めに、裁判上の請求があったものとみなす。 2 前項に規定する場合には、その参加は、訴訟の係属の初めに遡って法律上の期間の遵守の効力を生ずる。 |
「承継人」の意義
- 承継人は当事者となり、被承継人の承継時点での訴訟追行上の地位をそのまま承継する人のこと
52条
第52条(共同訴訟参加) 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合には、その第三者は、共同訴訟人としてその訴訟に参加することができる。 2 第四十三条並びに第四十七条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による参加の申出について準用する。 |
「訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合」の意義
- 第三者も当該訴訟につき当事者適格を有し、かつ自ら訴え、又は訴えられなくても判決の効力を受ける場合(類似必要的共同訴訟が成立する場合)
87条
第87条(口頭弁論の必要性) 当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める。 2 前項ただし書の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。 3 前二項の規定は、特別の定めがある場合には、適用しない。 |
口頭弁論の意義
- 口頭弁論とは、期日において、当事者双方が、裁判官の面前で主張及び各種申立てをする訴訟手続きのこと
- 口頭主義、公開主義、直接主義、双方審尋主義が適用される
106条
第106条(補充送達及び差置送達) 就業場所以外の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。郵便の業務に従事する者が日本郵便株式会社の営業所において書類を交付すべきときも、同様とする。 2 就業場所(第百四条第一項前段の規定による届出に係る場所が就業場所である場合を含む。)において送達を受けるべき者に出会わない場合において、第百三条第二項の他人又はその法定代理人若しくは使用人その他の従業者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものが書類の交付を受けることを拒まないときは、これらの者に書類を交付することができる。 3 送達を受けるべき者又は第一項前段の規定により書類の交付を受けるべき者が正当な理由なくこれを受けることを拒んだときは、送達をすべき場所に書類を差し置くことができる。 |
「書類の受領について相当のわきまえのあるもの」の意義
- 送達の趣旨を理解して交付を受けた書類を受送達者に交付することを期待することのできる程度の能力を有する者
114条
第114条(既判力の範囲) 確定判決は、主文に包含するものに限り、既判力を有する。 2 相殺のために主張した請求の成立又は不成立の判断は、相殺をもって対抗した額について既判力を有する。 |
「既判力」の意義
- 既判力は、当事者の手続保障の充足を根拠とし、紛争の蒸し返し防止のために必要とされるもの
- 主文で表示された訴訟物の存否についての判断にのみ生じ、判決理由中の判断には生じない
「主文に包含するもの」の意義
- 原則として①既判力の基準時における権利・法律関係についての判断に限られ②訴訟物たる権利・法律関係についての判断に限られる
訴訟判決(訴え却下判決)の既判力について
- 「確定判決」には訴訟判決(訴え却下判決)も含まれると解する
- 判決基準時に当事者適格が認められないという点において既判力を生じる
- 既判力は、当事者の手続保障の充足を根拠とし、紛争の蒸し返し防止のために必要
115条
第115条(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲) 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。 一 当事者 二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人 三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人 四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者 2 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。 |
「口頭弁論終結後の承継人」の意義
- 既判力を拡張することによって、紛争解決の実効性を確保できる者
- 具体的には、紛争主体の地位の移転を受けた者
134条
第134条(訴え提起の方式) 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。 2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。 一 当事者及び法定代理人 二 請求の趣旨及び原因 |
「債務不存在確認の訴え」について
- 「請求の特定」が認められるか否か問題となる
- 「請求の特定」が要求された趣旨は、「裁判所に対する審判対象の明示、被告に対する防御対象の明示」にある
- 債務不存在確認の場合、請求の趣旨・原因を斟酌することで、審判対象・防御対象は明らかになるため「請求の特定」は肯定される
135条
第135条(将来の給付の訴え) 将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。 |
「将来給付の訴え」の意義
- 事実審の口頭弁論終結時までに履行期が到来しない請求権を主張する訴え
「あらかじめその請求をする必要がある場合」の意義
- 事実審の口頭弁論終結時までに履行期が到来しない請求権で、履行期が到来しても相手方の任意の履行が期待できない場合など、あらかじめ請求をする必要がある場合のこと
「あらかじめその請求をする必要がある場合」の要件
- ①請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されること【継続】
- ②請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動があらかじめ明確に予測されること【明確】
- ③起訴責任を債務者に転換しても格別不当といえない【債務者負担が不当でない】
142条
第142条(重複する訴えの提起の禁止) 裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。 |
二重起訴禁止の趣旨
- 訴訟経済、相手方の応訴の煩回避、判決の矛盾抵触の回避
143条
第143条(訴えの変更) 原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。 2 請求の変更は、書面でしなければならない。 3 前項の書面は、相手方に送達しなければならない。 4 裁判所は、請求又は請求の原因の変更を不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その変更を許さない旨の決定をしなければならない。 |
「請求の基礎」の意義
- ①両請求の主要な争点が共通、かつ②各請求の利益主張が社会生活上同一又は一連の紛争に関するものとみられる場合をいう
146条
第146条(反訴) 被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。 一 反訴の目的である請求が他の裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属するとき。 二 反訴の提起により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき。 2 本訴の係属する裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において、反訴の目的である請求が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは、前項第一号の規定は、適用しない。 3 日本の裁判所が反訴の目的である請求について管轄権を有しない場合には、被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と密接に関連する請求を目的とする場合に限り、第一項の規定による反訴を提起することができる。ただし、日本の裁判所が管轄権の専属に関する規定により反訴の目的である請求について管轄権を有しないときは、この限りでない。 4 反訴については、訴えに関する規定による。 |
「本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求」の意義
- 反訴請求と本訴請求の関連性のある場合に加え、防御方法との関連性のある場合にも反訴が許される
- 相手方の保護を目的としており、相手方の同意や応訴があれば関連性はなくともよいとされ、要件は緩和される
179条
第179条(証明することを要しない事実) 裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。 |
弁論主義とは、訴訟資料の提出を当事者の権能とする建前のこと。
弁論主義の趣旨として、当事者意思の尊重がある。
弁論主義の3原則は、
- 第1原則:裁判所は、当事者の主張しない事実を判決の基礎に採用してはならない(第1テーゼ)
- 第2原則:裁判所は、当事者に争いのない事実は、そのまま判決の基礎として採用しなければならない(第2テーゼ)
- 第3原則:裁判所は、当事者間に争いのある事実を証拠によって認定する際には、当事者の申し出た証拠によらなければならない(第3テーゼ)
「弁論主義の第1テーゼ」の適用される事実の範囲
- 主要事実に限られる
- 主要事実とは、権利の発生・変更・消滅を定める規範の要件に直接該当する具体的事実
- 間接事実・補助事実は、主要事実との関係では証拠と同様の機能を有するため、弁論主義を打倒させると裁判官に不自然な判断を強いることとなり、かえって自由心証主義(247条)に反するおそれがある
- 「所有権の来歴経過」は主要事実(判例・通説)(→所有権の取得という法的効果の存否の判断に直接必要な要件をなす事実であるため)
「自白」の意義
- 裁判上の自白とは、相手方の主張する自己に不利益な事実を認める陳述のこと
220条
第220条(文書提出義務) 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。 一 当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するとき。 二 挙証者が文書の所持者に対しその引渡し又は閲覧を求めることができるとき。 三 文書が挙証者の利益のために作成され、又は挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき。 四 前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。 イ 文書の所持者又は文書の所持者と第百九十六条各号に掲げる関係を有する者についての同条に規定する事項が記載されている文書 ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの ハ 第百九十七条第一項第二号に規定する事実又は同項第三号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書 ニ 専ら文書の所持者の利用に供するための文書(国又は地方公共団体が所持する文書にあっては、公務員が組織的に用いるものを除く。) ホ 刑事事件に係る訴訟に関する書類若しくは少年の保護事件の記録又はこれらの事件において押収されている文書 |
「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」の意義
- ①内部利用目的・外部非開示性②実質的不利益性③特段の事情がない、3要件を満たした場合、自己利用文書該当性が肯定される
220条の趣旨
- 文書提出義務を一般化し、当事者の実質的台頭を図ること(自己利用文書該当性は限定解釈すべき)
246条
第246条(判決事項) 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。 |
民事訴訟法246条の趣旨
- 原告の合理的意思の尊重と被告の不意打ち防止
247条
第247条(自由心証主義) 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。 |
自由心証主義の意義
- 自由心証主義とは、裁判における事実認定に際して、裁判官が、制約を受けることなく、審理に現れた全ての資料を基礎として、自由な判断で心証を形成することを認める原則のこと
262条
第262条(訴えの取下げの効果) 訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。 2 本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。 |
「同一の訴え」の意義について
- 262条2項は、終局判決を得た後に訴えを取り下げることにより裁判を徒労に帰せしめたことに対する制裁的趣旨の規定
- 旧訴の取下者に対し、取下げ後に新たな訴えの利益又は必要性が生じているにもかかわらず、一律絶対的に司法的救済の道を閉ざすまで意図しているものではない
- 「同一の訴え」とは、①当事者②訴訟物たる権利関係が同一③訴えの利益又は必要性の点についても事情が同一
- 新訴が旧訴と訴訟物を同じくする場合であっても、再訴の提起を正当ならしめる新たな利益又は必要性が存するときは、同条項の適用はない
267条
第267条(和解調書等の効力) 和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。 |
「確定判決と同一の効力」の意義
- 既判力を認めつつ、和解に実体法上の無効・取消原因がある場合は、裁判上の和解は無効とし、既判力は生じないとしている(制限的既判力)