予備試験過去問(論文)

令和3年度 司法試験予備試験過去問題・答案構成(論文式_民事訴訟法)

問題

(〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は,7:3)

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。

【事例】
Xは,Yに対して貸付債権を有していた(以下「本件貸付債権」という。)が,Xの本件貸付債権の回収に資すると思われるのは,Yがその母親から相続によって取得したと思われる一筆の土地(以下「本件不動産」という。)のみであった。不動産登記記録上,本件不動産は,相続を登記原因とし,Yとその兄であるZの,法定相続分である2分の1ずつの共有とされていたが,Xは,YとZが遺産分割協議を行い,本件不動産をYの単独所有とすることに合意したとの情報を得ていた。
そこで,Xは,本件不動産のZの持分となっている部分について,その所有者はZではなくYであると主張し,本件貸付債権を保全するため,Yに代位して,Zを被告として,本件不動産のZの持分2分の1について,ZからYに対して遺産分割を原因とする所有権移転登記手続をすることを求める訴えを提起した(以下「本件訴訟」という。)。

〔設問1〕((1)と(2)は,独立した問題である。)

(1) Yとしては,Xの主張する本件貸付債権は既に弁済しており,XY間には債権債務関係はないと考えている。他方,本件不動産のZの持分の登記については,遺産分割協議に基づいて,自己に登記名義を移転してほしいと考えている。この場合に,Yが本件訴訟に共同訴訟参加をすることはできるか,訴訟上考え得る問題点を挙げて,検討しなさい。
(2) Xの得ていた情報とは異なり,YZ間の遺産分割協議は途中で頓挫していた。そのため,Yとしては,Zに対して登記名義の移転を求めるつもりはない。他方,YがXY間には債権債務関係はないと考えている点は,(1)と同様である。
この場合に,Yが本件訴訟に独立当事者参加をすることはできるか,訴訟上考え得る問題点を挙げて,検討しなさい。

〔設問2〕
〔設問1〕の場合と異なり,本件訴訟係属中に,XからYに対して訴訟告知がされたものの,Yが本件訴訟に参加することはなく,XとZのみを当事者として訴訟手続が進行し,その審理の結果,Xの請求を棄却する旨の判決がされ(以下「本件判決」という。),同判決は確定した。
本件判決の確定後,Yの債権者であるAは,その債権の回収を図ろうとし,Yの唯一の資産と思われる本件不動産の調査を行う過程で,既にXから本件訴訟が提起され,Xの請求を棄却する本件判決が確定している事実を初めて知った。
Aとしては,本件不動産についてYの単独所有と考えており,Yに代位して,Zを被告として,本件不動産のZの持分2分の1について,ZからYに対して遺産分割を原因とする所有権移転登記手続を求める訴えを提起することを検討しているが,確定した本件判決の効力がAに及ぶのではないか,という疑問を持った。
本件判決の効力はAに及ぶか,本件判決の既判力がYに及ぶか否かの検討を踏まえて答えなさい。

出題趣旨

本問は,債権者代位訴訟に関する訴訟法上の論点について,民法改正も踏まえた基本的理解を問うものであり,いずれの設問も,条文上の根拠を明確にし,いかなる要件や効果との関係で問題となるのか,問題の所在を適切に指摘することがまずは求められる。
〔設問1〕では,債務者が本問の事実状況において,当事者として債権者代位訴訟へどのような形で関与し得るかが問われており,その形態として,共同訴訟参加と独立当事者参加の検討を求めている。設問1(1)は,まずYがXに共同訴訟参加する場合の一般的要件として,当事者適格の存在や合一確定の必要を論じた上で,次に本問の事実状況からはYの主張によればXとYが共同訴訟人としての協力関係にないことがうかがわれるため,その点を踏まえてなお共同訴訟参加を認めることが適当か,合一確定の要請等も踏まえ,分析する論述が求められる。設問1(2)では,債権者代位訴訟における債権者の被保全債権の存否を争っているため,独立当事者参加として片面的な権利主張参加の可否が問題となる。Yの主張するところをXに対する本件貸付債権に係る債務の不存在確認請求と法律構成した上で,権利主張参加の可否に関し,例えば,請求の非両立性といった規範を定立し,X とYの各請求内容やそれを基礎付ける主張事実を比較した場合はどうかにつき,Yにとって本件訴訟を牽制する必要性が高いという実質的観点も踏まえ,本件事案に即して具体的に検討されているかが問われている。
〔設問2〕は,債権者代位訴訟の判決効に関する問題である。まず債権者代位訴訟における既判力が債務者(Y)に及ぶかについて,改正後の民法下での理論構成を論じることが求められる。その上で,本件訴訟の判決効を代位債権者以外の債権者(A)に拡張することが肯定されるかを,第三債務者(Z)の保護等の観点も勘案しつつ,その理論構成と合わせて検討されているかを問うものである。

答案構成

第1 設問1について

1 (1)について

  • 共同訴訟参加は「合一にのみ確定すべき場合」(52条)に認められる
  • 債務者Yに判決効の拡張が認められ「合一にのみ確定すべき場合」にあたる
  • 第三者に当事者適格が必要→債務者Yは当事者適格を有する
  • Yは共同訴訟参加が可能→XYは協力関係にないため、共同訴訟参加ではなく独立当事者参加

2 (2)について

  • Yは独立当事者参加として、権利主張参加(47条1項後段)の申出が考えられる
  • 権利主張参加の要件、趣旨→本問へのあてはめ
  • Yは本件訴訟に独立当事者参加が可能

第2 設問2について

1 判決の既判力がYに及ぶか

  • 債権者代位訴訟について(115条1項2号)
  • 本問へのあてはめ
  • XからYに訴訟告知されており、Yに判決の既判力が及ぶ

2 判決の効力がAに及ぶか

  • 判決の既判力をAに拡張する根拠はない→解釈で拡張できるか否か
  • 債権者代位訴訟の判決効は、債務者への拡張を経て、他の債権者にも及ぶと解する
  • 判決の効力はAに及ぶ

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