予備試験過去問(短答)

令和4年度 司法試験予備試験過去問題・解答(短答式_行政法)

第13問

行政活動と法源に関する次のアからウまでの各記述について、法令又は最高裁判所の判例に照らし、正しいものに○、誤っているものに×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No25])
ア.慣習法は、行政法の法源として認められる場合があるが、公水使用権のように私人の権利の根拠として用いられる場合、行政法の法源としては認められない。
イ.行政活動により国民の権利を侵害し、又は自由を制限するには、その根拠として法律が必要となるが、そのための法律としては、行政機関の任務又は所掌事務を定める行政の組織規範があれば足りる。
ウ.行政庁が条例によって課された代替的作為義務に違反した者に対し代執行を行うためには、代執行ができる旨の規定が条例中に定められていなければならない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ× 
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

正解:8

ポイント

ア:判例では「公水使用権は、慣習によるものであると行政庁の許可によるものであるとを問わず」(最判昭37.4.10)とあり、慣習による公水使用権であっても、行政法の法源として認められている→×

イ:「法律留保」の原則からその内容となる法律には「根拠規範」が必要→×

ウ:行政代執行法にある要件を満たせば、条例に規定する必要はない→×

第14問

行政手続法施行前の行政手続についての最高裁判所の判例に関する次のアからウまでの各記述について、正しいものに○、誤っているものに×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No26])
ア.いわゆる個人タクシー事件に係る最高裁判所昭和46年10月28日第一小法廷判決(民集25巻7号1037頁)は、多数の者のうちから少数特定の者を、具体的個別的事実関係に基づき選択して個人タクシー事業の免許の許否を決しようとする行政庁に対し、道路運送法の定める免許基準の趣旨を具体化した審査基準を設定することを要求したが、当該審査基準を公にしておくことまでは要求していない。
イ.いわゆる成田新法事件に係る最高裁判所平成4年7月1日大法廷判決(民集46巻5号437頁)は、行政庁が不利益処分をする場合に、その名宛人に対し当該不利益処分の理由を示さなければならない旨を定める法令が存しなくても、当該不利益処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、当該不利益処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量した結果に基づき、当該不利益処分の理由の提示が憲法上要請される場合があると判示している。
ウ.いわゆる伊方原発訴訟に係る最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁)は、原子炉設置許可の申請に対して行政庁が処分をする際、憲法第31条に基づき、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させることを要求している。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ× 
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

正解:4

ポイント

ア:判例では「内部的にせよ、趣旨を具現化した審査基準を設定し」(最判昭46.10.28)とある→○

イ:判例では「行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない」(最大平4.7.1)→×

ウ:判例では「基本法及び規制法が周辺住民の手続き参加に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、憲法31条の法意に反するとはいえない」(伊方原発訴訟判決)とある→×

第15問

行政裁量に関する次のアからエまでの各記述について、最高裁判所の判例に照らし、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからエの順に[No27]か ら[No30])
ア.公立学校施設の目的外使用を許可するか否かは、原則として、当該学校施設の管理者の裁量に委ねられており、学校教育上支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる。[No27]
イ.懲戒権者が国家公務員に対して行う懲戒処分は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、その裁量権の範囲内にあるが、免職処分は、著しい不利益を伴うものであることから、裁判所が当該処分の適否を審査するに当たり、懲戒権者と同一の立場に立って、懲戒処分として免職処分を選択すべきと認められないと判断した場合は、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められ、違法となる。[No28]
ウ.公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病認定は、水俣病のり患の有無という客観的事実を確認する行為であり、この点に関する処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではなく、上記水俣病認定の申請に対する処分行政庁の判断の適否に関する裁判所の審理及び判断は、裁判所において、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個々の具体的な症候と原因物質との間の個別的な因果関係の有無等を審理の対象として、申請者につき水俣病のり患の有無を個別具体的に判断すべきである。[No 29]
エ.宗教的信条と相容れないことから剣道実技に参加しなかったことにより体育科目の成績が認定されなかった学生に対する市立高等専門学校の校長の原級留置処分及び退学処分は、代替措置を採ることが実際上可能であった場合であっても、当該学生が、剣道実技が必修でない学校を選択することができ、かつ、当該学校の入学手続時に剣道実技が必修であることを知っていた場合は、その裁量権の範囲を超える違法なものとはならない。[No30]


正解:1、2、1、2

ポイント

ア:判例では「学校施設の目的外使用許可は原則、管理者の裁量。(中略)合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる」(最判平18.2.7)とある→○

イ:判例では「裁判所が審査するにあたって、懲戒権者と同一の立場で判断すべきものではなく、懲戒権者の処分が社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認める場合に限り違法であると判断すべき」(最判昭52.12.20)とある→×

ウ:判例では「水俣病認定については客観的事実を確認する行為であって、処分庁の裁量に委ねられる性質のものではない」「裁判所において、経験則に照らして個々の事案における諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個別具体的に判断すべき(最判平25.4.16)とある→○

エ:判例では「退学処分は社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超えた違法なもの」(最判平8.3.8)とある→×

第16問

行政調査に関する次のアからエまでの各記述について、法令又は最高裁判所の判例に照らし、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからエの順に[No 31]から[No34])

ア.国税通則法第74条の2第1項に基づく質問検査は、諸般の具体的事情に鑑み、質問検査の客観的な必要性があると判断される場合に認められるものであって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等法律上特段の定めのない実施の細目については、上記のような質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある職員の合理的な選択に委ねられている。[No31]

(参考条文)国税通則法第74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
国税庁、国税局若しくは税務署(中略)又は税関の当該職員(中略)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(中略)を検査し、又は当該物件(中略)の提示若しくは提出を求めることができる。
一~四 (略)
2~5 (略)

イ.国税通則法の定める税務調査は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないから、当該調査により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定されるときは、質問検査の権限を行使することは許されない。[No32]
ウ.警察官による交通違反の予防、検挙を目的として、警察法第2条及び警察官職務執行法第1条の趣旨を踏まえ強制力を伴わない任意手段により行われる自動車の検問は、自動車の運転者が合理的に必要な限度で行われる交通の取締りに協力すべきであることを考慮して許容されるものであるから、車両の外観、走行の態様等に異常が見られる場合でなければ許されない。[No 33]
エ.国税通則法の定める犯則事件の調査手続は、実質的に捜査手続としての性質を有し、犯則嫌疑者の身体を捜索する場合には裁判官の発する許可状が必要となるが、犯則嫌疑者が置き去った物件を検査する場合には許可状を要しない。[No34]


正解:1、2、2、1

ポイント

ア:判例では「質問検査は客観的な必要性があると判断される場合に認められるもの」「質問検査の必要があり、相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」(最決昭48.7.10)とある→○

イ:判例では「証拠資料が後に犯則事件の証拠としての利用が想定できたとしても直ちに、質問又は検査の権限が犯則事件の調査・捜査のための手段として行使されたことにはならない」(最決平16.1.20)とある→×

ウ:判例では「運転者への質問などは、任意協力を求める形で行われ、不当な制約がない限り適法」(最決昭55.9.22)とある→×

エ:判例では「許可状がなくても犯則嫌疑者が置き去った物件を検査することができる」(最判昭59.3.27)とある→○

第17問

情報公開に関する次のアからウまでの各記述について、法令又は最高裁判所の判例に照らし、正しいものに○、誤っているものに×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No35])
ア.行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)は、外国の国籍を有する者にも開示請求権を認めており、また、衆議院・参議院の事務局や最高裁判所の事務総局の保有する文書についても開示請求の対象としている。
イ.行政機関の長は、情報公開法に基づく開示請求に係る行政文書に特定の個人を識別することができる情報が記載されているために不開示とすべき場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、当該個人の同意がある場合に限り、当該行政文書を開示することができる。
ウ.A県公文書公開等条例は、「県の機関等が行う交渉、渉外、争訟等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものが記録されている公文書は公開しないことができる。」と定めるところ、A県知事が懇談会で外部の飲食店を利用した際の請求書、領収書、歳出額現金出納簿及び支出証明書のうち、公表予定のない懇談会出席者の氏名が記録されてはいるものの懇談の内容が全く記録されていないものについては、同条例により公開しないことができる文書に該当しない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ× 
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

正解:8

ポイント

ア:情報公開法の対象である行政機関は国の行政機関と会計検査院。国会、裁判所、地方公共団体は対象外→×

イ:不開示情報があっても公益上特に必要があると認めるときは、文書を開示することができる(裁量的開示)(個人の同意は不要)→×

ウ:判例では「交際の相手方が識別され得るものは、公開しないことができる文書に該当する」(最判平6.1.27)とある→×

第18問

訴えの利益に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例に照らし、正しいものに○、誤っているものに×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No36])
ア.AのB県公文書公開条例に基づく公文書の公開請求についてB県知事が非公開決定をしたことに対し、Aが当該非公開決定の取消訴訟を提起したところ、その係属中に、被告であるB県から当該公開請求に係る公文書が書証として提出された場合であっても、当該取消訴訟については、訴えの利益は失われない。
イ.C市がその設置している特定の保育所を廃止する旨の条例を制定したことに対し、当該保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者であるDらが当該条例制定行為について取消訴訟を提起したところ、その係属中に、Dらに係る保育の実施期間が満了した場合であっても、当該取消訴訟については、訴えの利益は失われない。
ウ.テレビジョン放送局の開設の免許申請をしたEが、旧郵政大臣から免許拒否処分を受けるとともに競願者であるFに対して免許処分がされたことに対し、Fに対する免許処分の取消訴訟及びE自身に対する免許拒否処分の取消訴訟を提起したところ、その係属中に、Fに対する当初の免許期間が満了したとしても、その後直ちにFに対して再免許が与えられ事業が継続して維持されている場合には、Eが提起したFに対する免許処分の取消訴訟のみならず、E自身に対する免許拒否処分の取消訴訟についても、訴えの利益は失われない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ× 
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

正解:3

ポイント

ア:判例では「公文書が書証として提出された場合であっても、訴えの利益は消滅しない」(最判平14.2.28)とある→○

イ:判例では「保育の実施期間がすべて満了し、訴えの利益は失われたものというべき」(最判平21.11.26)とある→×

ウ:東京12チャンネル事件判決(最判昭43.12.24)より→○

第19問

処分性に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例に照らし、正しいものに○、誤っているものに×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答 欄は、[No37])
ア.税務署長が源泉徴収による所得税について国税通則法第36条第 1 項の規定に基づいてする納税の告知は、法令の規定に従い自動的に税額が確定した国税債権につき納期限を指定して履行を請求する行為であり、税額を確定する効力を有するものではないが、法令の規定によって確定した税額がいくらであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであって、処分性が認められる。
(参照条文)国税通則法 (納税の告知)
第36条 税務署長は、国税に関する法律の規定により次に掲げる国税(その滞納処分費を除く。次条において同じ。)を徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない。
一 (略)
二 源泉徴収等による国税でその法定納期限までに納付されなかつたもの
三、四 (略)
2 前項の規定による納税の告知は、税務署長が、政令で定めるところにより、納付すべき税額、納期限及び納付場所を記載した納税告知書を送達して行う。ただし、担保として提供された金銭をもつて消費税等を納付させる場合その他政令で定める場合には、納税告知書の送達に代え、当該職員に口頭で当該告知をさせることができる。
イ.有効に成立した行政処分を処分後の事情の変更を理由として撤回する行為は、法令上当該撤回について直接明文の規定がない場合には、処分性が認められない。
ウ.公立学校の校長がその教職員に対して発した式典での国歌斉唱の際に国旗に向かって起立して斉唱することを命ずる旨の職務命令は、教職員個人の身分や勤務条件に係る権利義務に直接影響を及ぼすものではないから、処分性が認められない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ× 
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

正解:3

ポイント

ア:判例では「納税告知は課税処分の性質を有しないが、税務署長の意見が初めて公にされるものであるため、抗告訴訟もなしうる」(最判昭45.12.24)とある→○

イ:行政行為の撤回は処分性が認められる→×

ウ:判例では「国歌斉唱の際の起立・斉唱を命ずる職務命令は教職員の権利義務に直接影響を及ぼすものではなく、行政処分にはあたらない」(最判平24.2.9)とある→○

第20問

取消訴訟の審理に関する次のアからエまでの各記述について、行政事件訴訟法又は最高裁判所の判例に照らし、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからエの順に[No38]から[No41])
ア.取消訴訟において、原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤ったときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもって被告の変更を許すことができ、この決定に対しては、不服を申し立てることができない。[No38]
イ.固定資産評価審査委員会の審査決定は、個々の固定資産ごとにされるものであるから、同一の敷地にあって一つのリゾートホテルを構成している複数の建物の評価額に関する各審査決定の取消請求が、互いに行政事件訴訟法第13条第6号所定の関連請求に当たるということはできない。[No39]
ウ.指定確認検査機関による建築確認の取消しを求める訴えを提起した後、当該建築確認に係る建築物について完了検査が終了した場合に、上記訴えを、当該建築物について建築確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体に対する損害賠償を求める訴えに変更することは、許されない。[No40]
エ.行政文書の開示請求に対する不開示決定の取消訴訟において、不開示とされた文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは、原告が検証への立会権を放棄した場合であっても、許されない。[No41]


正解:1、2、2、1

ポイント

ア:行訴法15条1項、5項より→○

イ:判例では「各請求の基礎となる社会的事実は一体としてとらえるべきもの、密接に関連」(最決平17.3.29)とある→×

ウ:判例では「訴え提起後、完了検査終了の場合は、地方公共団体に対する損害賠償請求に変更することが相当」(最決平17.6.24)とある→×

エ:インカメラ審理に関する判例(最決平21.1.15)より→○

第21問

当事者訴訟に関する教員と学生による以下の対話中の次のアからエまでの【 】内の各記述について、法令又は最高裁判所の判例に照らし、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからエの順に[No42]から[No45])

教員:行政事件訴訟法第4条は、当事者訴訟として、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」と「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」の二つの類型を規定しています。これから、前者を「形式的当事者訴訟」、後者を「実質的当事者訴訟」と呼ぶこととしますが、まず、形式的当事者訴訟としては具体的にどのような訴訟がありますか。

学生:(ア)【土地収用法に基づく収用裁決により土地が収用された場合に、起業者が、当該収用裁決において定められた損失補償額が過大であるとして、同法の規定に基づき当該土地の所有者を被告として提起する訴訟がこれに当たります。】[No42]

教員:処分又は裁決をした行政庁が、当該処分又は裁決に関する形式的当事者訴訟が提起されたことを把握するための仕組みは設けられていますか。

学生:(イ)【はい。形式的当事者訴訟が提起された場合には、被告は、当該処分又は裁決をした行政庁が所属する国又は公共団体に対し、遅滞なく、その訴訟の告知をしなければならないとされています。】[No43]

教員:次に、実質的当事者訴訟としては具体的にどのような訴訟がありますか。

学生:(ウ)【公務員である原告が、職務命令への不服従を理由とする懲戒処分の予防を目的として、当該職務命令に基づく公的義務が存在しないことの確認を求める訴訟がこれに当たります。】[No44]

教員:原告である国民が、国又は公共団体を被告として金銭の支払を求める訴訟について考えてみましょう。この訴訟が実質的当事者訴訟であるか民事訴訟であるかによって、判決の効力について何か違いがありますか。

学生:(エ)【いずれであっても第三者一般に対する効力を有しない点では共通しますが、当該訴訟が実質的当事者訴訟である場合には、判決の内容によっては関係行政庁に対する拘束力を有することとなる点で、民事訴訟である場合と異なります。】[No45]


正解:1、2、2、1

ポイント

ア:土地収用法133条3項より→○

イ:行訴法39条より→×

ウ:本肢のものは無名抗告訴訟であるため→×

エ:行訴法41条より→○

第22問

次のアからエまでの各事例において、Xが本案訴訟を提起した上で行政事件訴訟法上の仮の救済を求めるとした場合、各事例について最も適切と考えられる仮の救済の申立てを、それぞれ後記1から3までの中から選びなさい。(解答欄は、アからエの順に[No46]から[No49])
ア.市が管理する公園で集会を行うことを計画しているXが、市の条例に基づき当該公園の使用許可申請をしたところ、不許可処分を受けた事例[No46]
イ.生活保護を受給していたXが、預貯金を保有していたことを理由に、保護廃止処分を受けた事例[No47]
ウ.マンションの建築に係る建築確認処分がされたところ、当該マンションの建築予定地の周辺住民であるXが、当該マンションの建築を阻止したいと考えている事例[No48]
エ.司法書士であるXが、予定される不利益処分の内容を3か月の業務停止処分とする聴聞を受けた事例[No49]
1.執行停止の申立て
2.仮の義務付けの申立て
3.仮の差止めの申立て


正解:2、1、1、3

ポイント

ア:公園の使用許可申請を認容してもらう必要があるため→仮の義務付けの申立て

イ:保護廃止処分の効力を停止する必要があるため→執行停止の申立て

ウ:マンションの建築停止を求める必要があるため→執行停止の申立て

エ:業務停止処分がなされないようにするため→仮の差止めの申立て

第23問

国家賠償に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例に照らし、正しいものに○、誤っているものに×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No50])
ア.中学校における教師の教育活動は、当該学校が市立学校であるとしても、国家賠償法第1条第1項にいう「公権力の行使」に該当しない。
イ.警察官が専ら自己の利を図る目的で職務執行を装って私人Aに職務質問をし、犯罪の証拠物名義で預かった所持品を不法に領得するため拳銃でAを射殺した事案につき、警察官の上記行為は客観的に職務執行の外形を備えているから、国家賠償法第1条第1項にいう公務員が「その職務を行うについて」違法に他人に損害を加えたときに該当する。
ウ.国の営造物である空港に離着陸する航空機の騒音等により周辺住民に被害が発生している場合のように、営造物を構成する物的施設自体に物理的、外形的な欠陥ないし不備があるわけではなく、営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生じさせる危険性があるにすぎない場合には、国家賠償法第2条第1項の設置又は管理の瑕疵を認めることができない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ× 
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

正解:6

ポイント

ア:判例では「公権力の行使には公立学校教師の教育活動も含まれる」(最判昭62.2.6)とある→×

イ:判例では「客観的に職務執行の外形をそなえる行為を認めることで広く国民の権益を擁護する」(最判昭31.11.30)とある→○

ウ:判例では「営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連において危害を生じさせる危険性がある場合を含む」(最大判昭56.12.16)とある→×

第24問

行政組織に関する次のアからエまでの各記述について、法令又は最高裁判所の判例に照らし、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからエの順に[No 51]から[No54])
ア.処分に関する審査請求について、審査庁が指揮監督権を有する上級行政庁である場合、当該審査請求に理由があるときは、当該審査庁は当該審査請求に対する裁決において審査請求の対象となった処分を変更すること又は変更すべき旨を命ずることができるものの、審査庁である上級行政庁が処分庁に当該処分をする権限を委任していた場合、当該審査庁は当該処分を変更すること又は変更すべき旨を命じることはできない。[No51]
イ.地方自治法第2条第9項第1号に規定する第一号法定受託事務は、本来国が果たすべき役割に係る事務であって、国がその事務の適正な処理を特に確保する必要があるものではあるが、当該事務を処理する都道府県等は、当該事務を所掌する国の大臣から、国の下級行政機関として指揮監督を受けるものではない。[No52]
ウ.国家行政組織法第3条の規定により省の外局として設置されている行政委員会は、その具体的な職権行使に当たっては、当該省の大臣の下級行政機関として、その指揮監督を全面的に受ける。[No53]
エ.下級行政機関の事務処理に関し、上級行政機関の指揮監督権の一つとして承認等を行う権限が認められることがあるが、上級行政機関により不承認とされた場合、下級行政機関は、その不承認の取消しを求めて抗告訴訟を提起することができる。[No54]


正解:2、1、2、2

ポイント

ア:上級行政庁(審査庁)が処分権限を委任した場合も一般的指揮権は残る→×

イ:法定受託事務は地方公共団体の事務であって、国の事務ではない→○

ウ:行政委員会は職権行使の独立性が保障されている→×

エ:機関訴訟が法定されていない限り、抗告訴訟の提起はできない→×

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