予備試験過去問(短答)

令和4年度 司法試験予備試験過去問題・解答(短答式_憲法)

第1問

人権の享有主体に関する次のアからウまでの各記述について、正しいものには○、誤っているものには×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No. 1])

ア.未成年者は、心身ともにいまだ発達途上にあり成熟した判断能力を持たないから、人権の保障について、成年者と異なる考慮が必要になる。日本国憲法も、「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」と定め、未成年者に選挙権を保障していない。
イ.法人は主として独立した経済活動の主体であることに存在意義があるから、財産権や営業の自由のような経済的自由権を享有する。しかしながら、精神的自由権は、自然人とだけ結合して考えられる人権であるから、法人には保障されない。
ウ.天皇及び皇族は、日本国籍を有する日本国民であり、憲法第3章の人権享有主体としての「国民」に含まれる。したがって、天皇及び皇族にも、表現の自由、外国移住の自由、国籍離脱の自由及び学問の自由について、国民一般と同程度の保障が及ぶ。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×


正解:4

ポイント

ア:「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」(憲法15条3項)→○

イ:八幡製鉄事件判決では法人の人権享有主体性について、「性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用される」とされている→×

ウ:天皇は日本国の象徴としての地位に立つ→×

第2問

憲法第13条に関する次のアからウまでの各記述について、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.2]から[No.4])

ア.判例は、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有し、警察官が、正当な理由なく個人の容ぼう等を撮影することは、憲法第13条の趣旨に反し許されないが、かかる自由も無制限に保護されるわけではなく、犯罪捜査に必要な撮影をすることは許容される場合があるとしている。[No.2]

イ.憲法第13条で保障される幸福追求権は、個別の基本権を包括する基本権であるが、その内容について、個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体をいうと理解する見解を採ったとしても、これに含まれない生活領域に関する行為の自由が憲法上保護されなくなるわけではない。[No.3]

ウ.プライバシー権は憲法第13条で保障されると説く見解のうち、これを「自己に関する情報をコントロールする権利」と理解する立場は、その保障範囲が、個人の私的領域に他者を無断で立ち入らせないという自由権的側面にとどまるとしており、それを超えてプライバシーの保護を公権力に対して求めるという請求権的側面を想定していない。[No.4]


正解:ア 1 イ 1 ウ 2

ポイント

ア:京都府学連事件では、選択肢の内容が判示されているため○

イ:人格的利益説によると個人の行動一般についても、法律留保原則や比例原則が適用され、憲法上の保護を受けるとされるため○

ウ:プライバシー権を「自己に関する情報をコントロールする権利」とする立場は、自由権的側面と請求権的側面を含むとされるため×

第3問

憲法第20条に関する次のアからウまでの各記述について、bの見解がaの見解の批判となっている場合には1を、そうでない場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.5] から[No.7])

ア.a.憲法第20条第2項と同条第3項の規定は、その目的、趣旨、対象、範囲を異にしており、同条第2項の「宗教上の行為、祝典、儀式又は行事」は、必ずしも全てが同条第3項の「宗教的活動」に含まれるという関係にはない。

b.憲法第20条第3項の「宗教的活動」に含まれない宗教上の祝典、儀式、行事等であっても、国家がこれに参加を強制すれば、同条第2項違反の問題が生じ得る。[No.5]

イ.a.憲法第20条第3項にいう「宗教的活動」とは、国及びその機関の活動の中で宗教と関わりを持つ全ての行為を指すものではなく、その関わりが相当とされる限度を超えるものに限られる。

b.国家が社会生活に規制を加え、あるいは教育、福祉、文化等に関する助成、援助等の諸施策を実施するに当たって、宗教と一定の関わりを生ずることは避けられない。[No.6]

ウ.a.憲法第20条第3項の「宗教的活動」とは、目的が宗教的意義を持ち、効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるものをいい、その該当性判断において、一般人の宗教的評価や行為者の意図等の主観、行為が一般人に与える影響等も考慮すべきである。

b.「宗教的活動」の該当性判断において一般人の宗教的評価等を考慮することは、多数者による少数者の信仰の抑圧につながる可能性がある。[No.7]


正解:ア 2 イ 2 ウ 1

ポイント

  • ウb以外の全ての選択肢は、津地鎮祭事件判決(最判昭52.7.13)の多数意見と同様の立場のもの
  • 論理問題として解答することも可能。ウのみ、「bの見解がaの見解の批判」という論理構造になっている

第4問

表現の自由に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものには○、誤っているものには×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No.8])

ア.ビラの配布のために集合住宅の共用部分及び敷地内に管理権者の承諾なく立ち入って、その管理権やそこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害したとしても、ビラの内容が政治的意見を記載したものであれば、表現の自由の行使として尊重されるべきであるから、当該立入り行為を刑法第130条前段の罪に問うことは憲法第21条第1項に違反し、許されない。
イ.公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場であり、図書の著作者にとっては、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるから、図書の著作者は、公立図書館に対して表現の自由に基づいて自らの著作物を購入し、閲覧に供するよう求めることができる。
ウ.報道機関の報道が正しい内容を持つためには、報道のための取材の自由も憲法第21条の精神に照らして十分尊重されなければならず、取材源の秘密は、取材の自由を確保するために必要なものとして重要な社会的価値を有するから、報道機関の記者が民事訴訟で証人として尋問された場合、取材源に関する証言の拒絶は、それによって真実発見及び裁判の公正が犠牲になるとしても、直ちに認められなければならない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ×   5.ア× イ○ ウ○  6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○   8.ア× イ× ウ×


正解:8

ポイント

ア:思想を外部に表明するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない(最判平20.4.11)→×

イ:判例(最判平17.7.14)でも著作者が図書館に対して閲覧を求めることができるとはしていない→×

ウ:判例(最判平18.10.3)では「公正な裁判を実現すべき必要性が高く、証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合」には、証言拒絶も可能としているため ×

第5問

教育に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものには○、誤っているものには×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No.9])
ア.憲法第26条の規定の背後には、子どもは学習権を有するとの観念が存在しており、子どもに対する教育は、専ら子どもの利益のために、教育を与える者の責務として行われるべきものであることからすると、教育の内容及び方法は、基本的に、子どもの教育の実施に当たる教師が決定すべきこととなる。
イ.教育内容に対する国家的介入は抑制的であることが要請され、誤った知識や一方的な観念を子どもに植え付けるような教育を施すことを国が強制することは許されないと解されるが、このことは、教育内容について決定する国の権能を否定する理由とはならない。
ウ.憲法第26条第2項は、子女に教育を受けさせることを国民に義務付け、義務教育は無償とすると定めているのであるから、同項は、義務教育に関する限り、授業料のほか、教科書代金や学用品についても国が負担することを定めたものと解される。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×  3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ×   5.ア× イ○ ウ○  6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○   8.ア× イ× ウ×


正解:6

ポイント

ア:教育の内容及び方法を誰がいかにして決定すべく、また決定することができるかという問題に対する一定の結論は、当然には導き出されない(旭川学テ事件判決)→×

イ:「教育内容に対する国家的介入はできるだけ抑制的であることが要請される」「誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは憲法26条、13条の規定上からも許されない」(旭川学テ事件判決)→○

ウ:授業料のほかに教科書、学用品その他の教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものと解することはできない(最大判昭39.2.26)→×

第6問

刑事手続上の権利に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.10]から[No.12])
ア.憲法第31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続にも及ぶと解すべき場合があり、その場合には行政処分の相手方に常に事前の告知、弁解、防御の機会を与える必要がある。[No.10]
イ.憲法第35条は、住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利を規定しているが、この規定の保障対象には、住居、書類及び所持品に準ずる私的領域に侵入されることのない権利が含まれる。[No.11]
ウ.憲法第38条第1項は、自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障するものであり、氏名の供述も、これによって自己が刑事上の責任を問われるおそれがあることから、原則として保障が及ぶ。[No.12]


正解:2、1、2

ポイント

ア:行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成する公益の内容、程度、緊急性等を総合衡量して決定されるべきもの(成田新法事件判決)→×

イ:35条の保障対象には、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれる(最大判平29.3.15)→○

ウ:氏名は原則として不利益な事項に該当するものではない(最大判昭32.2.20)→×

第7問

日本の憲法史に関する次のアからウまでの各記述について、それぞれ正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.13]から[No.15])

ア.大日本帝国憲法の下では、天皇が有していた、作戦用兵の目的のために陸海軍を統括する統帥権について、国務大臣の輔弼の対象外とされたため、帝国議会は関与し得なかった。[No.13]
イ.大日本帝国憲法の下では、内閣制度は憲法で規定されていなかった。また、帝国議会の権限が強く保障されていたので、各国務大臣は天皇ではなく帝国議会に対して責任を負うとされていた。[No.14]
ウ.日本国憲法成立の法理に関する八月革命説は、ポツダム宣言の受諾によって天皇から国民に主権者が変更されたという説は現実社会の変化にそぐわない全くの擬制的な説明であると批判して、ポツダム宣言を受諾した1945年8月から革命が漸進的に進行し、占領体制から脱して国家主権を回復したときにその革命が成就し国民は真の主権者となった、とする説である。 [No.15]


正解:1、2、2

ポイント

ア:統帥権は性質上、専門的知識をもって、迅速に行われる要請から輔弼対象外で内閣、議会の関与が否定されていた→○

イ:各国務大臣は天皇に対してのみ責任を負っていた→×

ウ:八月革命説は、ポツダム宣言を受諾した段階で、大日本帝国憲法の天皇主権は否定され、同時に国民主権が成立し、日本の政治体制の根本原理となったと解する説→×

第8問

選挙権及び被選挙権に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものには○、誤っているものには×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No.16])
ア.憲法第15条第4項は、「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。」として投票の秘密を明文で保障しているが、選挙の公正が担保されることは、代表民主制の根幹をなすもので極めて重要であるから、選挙権のない者又は代理投票をした者の投票のような無効投票が存在する場合における議員の当選の効力を判断する手続の中で、こうした無効投票の投票先を明らかにするとしても、その限度では投票の秘密を侵害するものではない。
イ.労働組合は、団結権が保障されており、組合の団結を維持するための統制権の行使によって公職選挙における組合員の立候補の自由を制約することができるので、公職選挙において統一候補を擁立した場合、当該候補以外の組合員が立候補をやめなかったことを理由にその組合員を処分することができる。
ウ.組織的選挙運動管理者等が、買収等所定の選挙犯罪を犯して禁錮以上の刑に処せられた場合に、公職の候補者等であった者の当選を無効とし、かつ、これらの者が5年間当該選挙に係る選挙区において行われる当該公職に係る選挙に立候補することを禁止する旨を定めた公職選挙法の規定は、民主主義の根幹をなす公職選挙の公正を保持する極めて重要な法益を実現するための規定であり、立法目的は合理的であるとともに、立法目的を達成する手段として必要かつ合理的なものといえるから、憲法第15条に違反しない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×  3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ×   5.ア× イ○ ウ○  6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○   8.ア× イ× ウ×


正解:7

ポイント

ア:選挙権のない者又は代理投票をした者の投票についても、その投票が何人に対しなされたかは、議員の当選の効力を定める手続において、取り調べてはならない(最判昭25.11.9)とあるため→×

イ:組合員に対し、勧告または、説得の域を超え、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分するがごときは、組合の統制権の限界を超えるものとして違法(三井美唄労組事件)とあるため→×

ウ:選択肢の内容が最判平9.3.13で判示されているため→○

第9問

政党に関する次のアからウまでの各記述について、bの見解がaの見解の根拠となっている場合には1を、そうでない場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.17]から[No. 19])
ア.a.政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることを定めた政治資金規正法は、会社が政党及び政治資金団体に対して政治活動に関する寄附をすることを、一定の限度で認めている。
b.政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であり、かつ、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、その健全な発展に協力することは、会社にとって当然の行為として期待される。[No.17]
イ.a.国が政党に対し政党交付金による助成を行うことを定めた政党助成法は、政党に対する政党交付金の交付に当たっては、条件を付し、又はその使途について制限してはならないとしている。
b.政党が議会制民主主義を支える不可欠の要素であることからすると、その結社としての活動の自由が制約されることはやむを得ない。[No.18]
ウ.a.公職選挙法は、所属議員、直近の選挙における得票又は当該選挙における候補者に照らし一定以上の規模を有する政党のみに、衆議院及び参議院の比例代表選出議員の選挙に参加することを認めている。
b.その所属する政党の規模の大小により、選挙への参加機会が均等でないことは、信条又は社会的身分による差別に当たる疑いがある。[No.19]


正解:1、2、2

ポイント

ア:bの見解は、八幡製鉄事件判決と同様の立場のものであり、aの見解の根拠となっている→1

イ:bの見解がaの見解の根拠となっていない→2

ウ:bの見解がaの見解の根拠となっていない→2

第10問

国政調査権に関する次のアからウまでの各記述について、正しいものには〇、誤っているものには×を付した場合の組み合わせを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No. 20])
ア.憲法第62条において、議院は、国政調査に関して、証人の出頭、証言及び記録の提出を要求することができるとされているところ、その実効性を担保するため、法律は、証人が正当な理由なく出頭を拒否した場合や、偽証した場合に刑罰を科す旨を定めている。
イ.議院が、係属中の刑事事件において審理されている事実と同一の事実について調査することは、その調査の方法、目的を問わず、司法権の独立を侵すものであって許されない。
ウ.国政調査権の法的性質を、議院の憲法上の権能を実効的に行使するための補助的権能であると捉える立場からすると、国政調査権が国民の知る権利に仕える機能を有すると理解することはできない。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×  3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ×   5.ア× イ○ ウ○  6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○   8.ア× イ× ウ×


正解:4

ポイント

ア:議院証言法で規定されている→○

イ:係属中の刑事事件において、裁判所と異なる目的のために行われる調査は、司法権の独立を犯すものではないと一般的に解されている→×

ウ:補助的権能説にたっても国政調査権が国民の知る権利に仕える機能を有すると理解することは可能→×

第11問

合憲限定解釈に関する次のアからウまでの各記述について、bの見解がaの見解の批判となっている場合には1を、そうでない場合には2を選びなさい。(解答欄は、アからウの順に[No.21]か ら[No.23])
ア.a.関税法により輸入が禁止されている「風俗を害すべき書籍、図画」等について、合理的に解釈すれば、「風俗」とは専ら性的風俗を意味し、輸入禁止の対象とされるのは、わいせつな書籍、図画等に限られる。
b.表現の自由を規制する法律の規定には明確性が求められることに鑑みると、わいせつ表現物の輸入のみを規制しようとするのであれば、「わいせつな書籍、図画」等と具体的に規定すべきである。[No.21]
イ.a.地方公務員の争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおる等の行為を地方公務員法違反として刑事罰の対象とするには、あおり行為等が争議行為に通常随伴する以上のものであることを要する。
b.集団的かつ組織的な行為としての争議行為を成り立たせるものは、正にあおり行為等であって、あおり行為等は、その性格にかかわらず、争議行為の原動力をなすものである。 [No.22]
ウ.a.暴走族による集会を規制する条例における「暴走族」の定義が社会通念上の暴走族以外の集団が含まれる文言であっても、条例全体から読み取ることができる趣旨やその施行規則の規定等を総合して解釈すれば、規制対象となる「暴走族」は、暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族及びその類似集団に限られる。
b.「暴走族」が社会通念上、暴走行為を目的として結成された集団や、オートバイなどを集団で乗り回し、危険な運転や騒音などにより、暴走行為と同様の迷惑を他人に及ぼす者たちを指すものという理解が国民の間で定着している。[No.23]


正解:1、1、2

ポイント

ア:aの見解は税関検査事件判決、bの見解は同判決反対意見→1

イ:aの見解は都教組事件判決、bの見解は全農林警職法事件判決→1

ウ:aの見解は広島市暴走族追放条例事件判決、bの見解は同判決補足意見→2

第12問

条例に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものには○、誤っているものには×を付した場合の組合せを、後記1から8までの中から選びなさい。(解答欄は、[No.24])
ア.憲法第94条は、法律の範囲内で条例制定権を認めているが、ある事項について国の法令中にこれを規制する明文の規定がない場合であれば、当該事項について規制を設ける条例の規定は、国の法令に違反しない。
イ.条例は、公選の議員をもって組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であって、国民の公選した議員をもって組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によって刑罰を定める場合、法律による条例への委任は、一般的・包括的委任で足りる。
ウ.憲法第94条は、地方公共団体に条例制定権を認めており、ある事項を条例によって規制する結果として、地方公共団体ごとにその取扱いに差異が生じることがあり得るから、ある事項について条例によって刑罰を定める場合、地域によって刑罰の内容に差異が生じることも許容され得る。

1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ×  3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ×   5.ア× イ○ ウ○  6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○   8.ア× イ× ウ×


正解:7

ポイント

ア:明文規定がない場合、規制の欠如が当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、規律を設ける条例の規定は国の法令に違反する(徳島市公安条例事件判決)→×

イ:「法律の授権が白紙委任的なものであってはならない」「条例によって刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておけば足りる」(最大判昭37.5.30)→×

ウ:最大判昭33.10.15が同様の内容→○

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