第31問
法人でない社団を当事者とする場合について述べた次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、 [No.31])
ア.一定の村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には、当該入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産につき、これを争う者を被告とする総有権確認請求訴訟の原告適格を有する。
イ.預託金会員制のゴルフ場の会員によって組織され、会員相互の親睦等を目的とする団体は、その財産的側面につき、団体として内部的に運営され対外的にも活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され、かつ、その収支を管理する体制が備わっている場合でも、固定資産ないし基本的財産がない限り、当事者能力を有しない。
ウ.権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有しない。
エ.普通地方公共団体の区域に属する特定地域の住民により、その福祉のため各般の事業を営むことを目的として結成された任意団体であって、当該地方公共団体の下部行政区画ではなく、代表者たる区長、評議員等の役員の選出、多数決の原則による役員会及び区民総会の運営、財産の管理、事業の内容等につき規約を有し、これに基づいて存続・活動しているものは、当事者能力を有する。
オ.ある会社に対して債権を有する三者が、それぞれの有する債権を出資し当該会社の経営を管理してその営業の再建整備を図ると共に、協力して三者それぞれの有する債権を保全回収するため、民法上の任意組合として結成し、代表者を定めたものは、当事者能力を有する。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
正解:3
ポイント
ア:判例では「入会団体の不動産について、総有権確認請求訴訟の原告適格を認めている」(最判平6.5.31)→○
イ:判例では「「法人でない社団」として当事者能力が認められる場合がある」(最判平14.6.7)→×
ウ:判例(最判平26.2.27)では肢の内容について原告適格を認めている→×
エ:判例(最判昭42.10.19)より本肢は正しい→○
オ:判例(最判昭37.12.18)より本肢は正しい→○
第32問
補助参加に関する次の1から5までの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は、[No.32]、[No.33]順不同)
1.補助参加を許可する旨の裁判に対する抗告審が、即時抗告の相手方たる補助参加申出人に対し、即時抗告申立書の副本の送達をせず、反論の機会を与えることなく、補助参加を許さない旨の判断をしたことは、憲法第32条所定の「裁判を受ける権利」を侵害するものではない。
2.補助参加を許さない旨の決定が確定しても、同じ理由に基づく再度の補助参加の申出をすることは許される。
3.通常共同訴訟においては、共同訴訟人間に共通の利害関係があるときでも、補助参加の申出をしない限り、当然には補助参加をしたと同一の効果を生ずるものではない。
4.Y及びZの共同不法行為を理由とするY及びZに対するXの損害賠償請求訴訟の第一審において、Yに対する請求を認容し、Zに対する請求を棄却する判決がされ、Yが自己に対する判決につき控訴しない場合に、Yは、自己の求償権の保全を理由としてXZ間の判決について控訴するためXに補助参加をすることができる。
5.検察官を被告とする認知請求訴訟に、第三者が当該訴訟の結果により相続権を害されるとして検察官のために補助参加をしていた場合において、検察官自身は上告や上告受理申立てをせず、補助参加人のみが上告を提起したときは、当該上告は、補助参加人のための上訴期間満了前にされたものであっても、当事者である検察官のための上訴期間が経過した後にされた場合には、不適法なものとして許されない。
正解:2、5
ポイント
ア:判例(最決平23.9.30)では「補助参加の許否の裁判は、民事訴訟における付随手続についての裁判」であり補助参加を許さない旨の判断も憲法32条に違反するものではないとしている→○
イ:判例(最決昭58.6.25)では「再度の補助参加の申立は許されない」→×
ウ:判例(最判昭43.9.12)より本肢は正しい→○
エ:判例(最判昭51.3.30)では「自己の求償権の保全を理由に補助参加することも可能」としている→○
オ:判例(最決平28.2.26)では「補助参加人のための上訴期間満了前に上告がされた時は適法」としている→×
第33問
既判力に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.34])
ア.XがYに対して取得時効による所有権取得を主張して提起した甲土地の所有権確認を求める訴え(前訴)について請求を棄却する判決が確定した後、XがYに対して甲土地の共有持分権確認を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、前訴基準時前の相続による共有持分権の取得を理由としてXの請求を認容することは、前訴の確定判決の既判力に抵触しない。
イ.XがYに対して提起した500万円の貸金の返還を求める訴え(前訴)について、Yによる限定承認の抗弁を容れ、Yに対して相続によって得た財産の限度で500万円の支払を命ずる判決が確定した後、XがYに対して相続財産の範囲にかかわらず前記貸金の返還を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、前訴基準時前の法定単純承認事由に基づき、Yに対して相続財産の範囲にかかわらず500万円の支払を命ずることは、前訴の確定判決の既判力に抵触し、許されない。
ウ.XがYに対して総額1000万円のうち200万円の支払を求めることを明示した上で提起した貸金の返還を求める訴え(前訴)について弁済を理由として請求を棄却する判決が確定した後、XがYに対して前記貸金の残額800万円の支払を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、Xの請求を認容することは、前訴の確定判決の既判力に抵触しない。
エ.XがYに対して提起した所有権に基づく甲建物に係るY名義の所有権保存登記抹消登記手続を求める訴え(前訴)について請求を認容する判決が確定した後、YがXに対して甲建物の所有権確認を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、前訴基準時前の相続による所有権取得を理由にYの請求を認容することは、前訴の確定判決の既判力に抵触し、許されない。
オ.XのYに対する甲債権に係る500万円の支払請求訴訟(前訴)において、Yが800万円の乙債権による相殺の抗弁を提出したところ、裁判所は、甲債権、乙債権双方とも全額認められ、相殺により対当額で消滅したとの理由で、Xの請求を棄却する判決をし、同判決は確定した。その後、Yが、乙債権のうち前訴で対当額による相殺に供しなかった300万円の支払を求める訴え(後訴)を提起した場合に、後訴裁判所が、前訴基準時前に乙債権は消滅していたという理由でYの請求を棄却することは、前訴の確定判決の既判力に抵触しない。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ
正解:4
ポイント
ア:判例(最判平9.3.14)では「目的物の所有権を有していない旨の判断について既判力が生じるため、所有権の一部である共有持分を主張することは既判力に抵触する」→×
イ:判例(最判昭49.4.26)では「留保付判決確定の後、無留保判決を得るための訴訟提起は許されない」とされ本肢は「既判力に準ずる効力」があるとされる→×
ウ:判例(最判平10.6.12)より本肢は「既判力には抵触しないが、信義則に反して許されない」ものである→○
エ:判例(最判昭30.12.1)では「既判力は主文に包含される訴訟物について生じる」とされており、本肢の場合は既判力に抵触するものではない→×
オ:判例(大判昭10.8.24)では「相殺をもって対抗した額の不存在について既判力が生じる」としている→○
第34問
確認の利益に関する次の1から5までの各記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものを2個選びなさい。(解答欄は、[No.35]、[No.36]順不同)
1.相続開始後に遺言の無効確認を求める訴えは、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合であっても、確認の利益を欠く。
2.共同相続人間における遺産確認の訴えは、特定の財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求めるものと解される場合であっても、確認の利益を欠く。
3.共同相続人間において、具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。
4.遺言者生存中に遺言の無効確認を求める訴えは、たとえ遺言者が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあり、当該遺言の撤回又は変更の可能性が事実上ない状態であっても、確認の利益を欠く。
5.共同相続人間において、共同相続人の一人についての相続欠格事由の存否を争う場合に、その者が被相続人の遺産につき相続人の地位を有しないことの確認を求める訴えは、確認の利 益を欠く。
正解:3、4
ポイント
3:具体的相続分について価格または割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く→○
4:判例(最判平11.6.11)より「遺言は死亡により初めて効力を生じる」→○
第35問
筆界確定の訴えに関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.37])
ア.筆界確定の訴えの請求の趣旨として、原告は、隣接する両土地の筆界を確定する旨の判決を求めるだけでは足りず、特定の筆界を明示しなければならない。
イ.一定の線を筆界と定めた第一審判決に対し、これに不服のある当事者の一方のみが控訴し、附帯控訴がされていない場合であっても、控訴裁判所は、第一審判決を変更して、第一審判決が定めた筆界よりも更に控訴人にとって不利な筆界を定めることができる。
ウ.相隣者間で筆界につき合意が成立しても、裁判所は、その合意と異なる位置にある線を筆界と定めることができる。
エ.原告が自己の所有する甲土地に隣接する乙土地の所有者を被告として筆界確定の訴えを提起したが、被告が甲土地の一部の時効取得を主張し、それが認められることにより、確定を求めた筆界の全部が被告の所有する土地の内部に存在することが明らかになった場合には、原告は当事者適格を失う。
オ.裁判所は、証拠等により特定の筆界を認定できない場合でも請求を棄却することは許されず、具体的事案に応じ最も妥当な筆界を合目的的な判断によって確定しなければならない。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ
正解:1
ポイント
ア:判例(最判昭41.5.20)より「当事者間の不明ないし争いの主張で十分」→×
エ:判例(最判平7.3.7)より本肢のケースでも当事者適格は失わない→×
第36問
重複する訴えの提起の禁止に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.38])
ア.重複する訴えに当たるか否かの審理においては、職権証拠調べをすることができる。
イ.一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起している場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許される。
ウ.原告の被告に対する土地所有権に基づく所有権移転登記手続請求訴訟の係属中に、被告が原告を相手方として、同一の土地について自己の所有権確認を求める訴えを提起することは、許される。
エ.本訴及び反訴の係属中に、反訴原告が、反訴請求債権を自働債権とし、本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは、許されない。
オ.先行訴訟と重複して提起された訴えである後行訴訟について、重複する訴えであることが看過され、請求を認容する判決が確定した場合には、被告は、当該確定判決に対し、重複する訴えの提起の禁止に反したことを理由として、再審の訴えを提起することができる。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ
正解:5
ポイント
エ:判例(最判平18.4.14)より本肢のケースは「禁じられない」とされている→×
オ:再審事由(338条1項)に該当しない→×
第37問
訴えの変更に関する次の1から5までの各記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。(解答欄は、[No.39])
1.訴えの変更は、請求の趣旨を変更せず、請求の原因を変更するにとどまる場合であっても、書面でしなければならない。
2.訴えの変更を許さない旨の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3.訴えの変更について、相手方が同意した場合には、著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときであっても、裁判所は、これを許さなければならない。
4.相手方が積極否認の理由として主張した重要な間接事実に基づいて訴えの変更をする場合には、相手方の同意がなく、請求の基礎に変更があるときであっても、訴えの変更をすることができる。
5.控訴審においては、訴えの変更をすることができない。
正解:4
ポイント
1:判例(最判昭35.5.24)より書面であることを要しない→×
2:訴えの変更を許さない旨の決定は、独立して不服を申し立てることができない【判例(大決昭8.6.30)】→×
3:著しく訴訟手続遅滞は公益に反し、認められない→×
5:控訴審でも訴えの変更は可能→×
第38問
当事者の欠席に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.40])
ア.裁判所は、当事者双方が最初にすべき口頭弁論の期日に欠席した場合であっても、当事者が提出した訴状及び答弁書を陳述したものとみなすことができる。
イ.当事者の一方が適式な呼出しを受けながら口頭弁論の期日に欠席した場合において、裁判所が、口頭弁論を終結し、判決言渡期日を指定して告知したときは、欠席した当事者に対し判決言渡期日の呼出状を送達することを要しない。
ウ.裁判所は、公示送達による呼出しを受けた被告が口頭弁論の期日に欠席した場合であっても、原告の主張する事実を自白したものとみなすことはできない。
エ.従前の口頭弁論の期日において申出が採用された証人尋問について、裁判所は、申出をした当事者が尋問すべき口頭弁論の期日に欠席した場合であっても、当該期日に尋問を実施することができる。
オ.原告が請求を棄却する判決に対して控訴を提起した場合において、当事者双方が控訴審の口頭弁論の期日に欠席し、1か月以内に期日指定の申立てをしなかったときは、訴えの取下げがあったものとみなされる。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ
正解:2
ポイント
ア:いずれか一方が出頭しなければ陳述擬制は認められない(158条)→×
オ:控訴審の場合、「控訴の取下げ」があったものとみなされる→×
第39問
民事訴訟法上の証拠及び情報の収集の制度に関する次の1から5までの各記述のうち、正しいものを2個選びなさい。(解答欄は、[No.41]、[No.42]順不同)
1.裁判所は、訴訟関係を明瞭にするために、職権で、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。
2.裁判所は、訴訟の係属中、必要があると認めるときでも、職権で、証拠保全として、当事者尋問をすることはできない。
3.訴えを提起しようとする者が訴えの被告となるべき者に対し訴えの提起を予告する通知を書面でした場合には、その予告通知をした者は、その予告通知を受けた者に対し、訴えの提起前に、訴えを提起した場合の主張又は立証を準備するために必要であることが明らかな事項について、書面で回答するよう、書面で照会することができる。
4.当事者は、裁判所に対し、裁判所から登記官に対して不動産の登記事項証明書の送付を嘱託することを申し立てることができる。
5.当事者は、訴訟の係属中、相手方に対し、第三者の私生活についての秘密に関する事項であって、これについての照会に回答することにより、その第三者の名誉を害するおそれがないものについて、書面で回答するよう、書面で照会することはできない。
正解:1、3
ポイント
2:237条より職権で証拠保全は可能→×
4:226条より当事者が交付請求できる場合には嘱託できない→×
5:163条より書面での照会も可能→×
第40問
証人尋問に関する次の1から5までの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを2個選びなさい。(解答欄は、[No.43]、[No.44]順不同)
1.証人尋問の申出は、証人を指定してしなければならない。
2.裁判所への出頭義務を負う証人が正当な理由なく出頭しない場合には、裁判所は、受命裁判官又は受託裁判官に裁判所外でその証人の尋問をさせることができる。
3.通常共同訴訟において、共同訴訟人A及びBのうち、Aのみが第一審判決に対して控訴を提起し、Bについては第一審判決が確定している場合には、控訴審において、Bを証人として尋問することができる。
4.未成年者を証人として尋問する場合には、親権者又は後見人の同意がなければ、宣誓をさせることができない。
5.同一期日において後に尋問を受ける証人であっても、裁判長の許可があれば、先行する他の証人の尋問中に在廷することができる。
正解:2、4
ポイント
2:この場合、195条の適用はない→×
4:親権者又は後見人の同意の有無は関係ない→×
第41問
直接主義に関わる手続についての次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.45])
ア.裁判官が代わり、当事者が従前の口頭弁論の結果を陳述する場合に、当事者の一方が欠席したときは、出頭した他方当事者だけではこの陳述をすることができない。
イ.控訴審において、当事者は、第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
ウ.大規模訴訟(当事者が著しく多数で、かつ、尋問すべき証人又は当事者本人が著しく多数である訴訟)に係る事件について、合議体である受訴裁判所は、当事者に異議がないときは、裁判所内において受命裁判官に証人尋問をさせることができる。
エ.検証は、受訴裁判所が相当と認めるときは、検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に嘱託して、受託裁判官に裁判所外において実施させることができる 。
オ.裁判官が単独で審理する事件について、その裁判官を含む合議体に審理が移行した場合には、当事者は従前の口頭弁論の結果を陳述する必要がない。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ
正解:2
ポイント
ア:判例(最判昭31.4.13)より「当事者の一方が欠席したときは、出頭した他方当事者だけではこの陳述をすることができる」→×
エ:直接主義の要請から弁論の更新が必要になる→×
第42問
申立事項と判決事項に関する次の1から5までの各記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものを2個選びなさい。(解答欄は、[No.46]、[No.47]順不同)
1.売買代金請求訴訟において、売買代金債権は存在するが、その履行期が未到来であることが明らかになった場合には、裁判所は、原告が売買代金債権を有する旨を確認する判決をすることができる。
2.貸金100万円の返還を求める訴訟において、原告から利息の支払を求める申立てがない場合には、裁判所は、利息の支払を命ずる判決をすることはできない。
3.物の引渡請求訴訟において、被告の過失によって物の引渡しができないことが明らかになった場合には、裁判所は、原告が訴えを変更しないときであっても、損害賠償を命ずる判決をすることができる。
4.原告が売買を原因として残代金500万円を支払うのと引換えに土地の所有権移転登記手続を求める訴訟において、残代金額が700万円であることが明らかになった場合には、裁判所は、被告に対し、原告から700万円の支払を受けるのと引換えに、原告への所有権移転登記手続を命ずる判決をすることができる。
5.同一事故により生じた不法行為による損害賠償請求権に基づき、治療費200万円、逸失利益500万円、慰謝料300万円の合計1000万円の支払を求める訴訟において、裁判所は、治療費を150万円、逸失利益を400万円、慰謝料を400万円とそれぞれ認定して合計950万円の支払を命ずる判決をすることはできない。
正解:2、4
ポイント
1:未到来の訴訟物について確認判決はできない→×
2、4:本肢のとおり→○
5:判例(最判昭48.4.5)より「同一事故による損害について訴訟物は一個」→×
第43問
裁判によらない訴訟の完結に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.48])
ア.原告が、被告の脅迫により訴えを取り下げたとしても、当該訴えの取下げは有効である。
イ.被告が本案について答弁書を提出した後、原告が訴えの取下書を提出し、被告がこれに対する同意を確定的に拒絶した場合には、後に被告が改めて同意をしても、当該訴えの取下げは効力を生じない。
ウ.訴訟上の和解が成立した場合には、和解の当事者は、その和解の内容である私法上の契約に係る意思表示の重要な部分に錯誤があったとして当該和解の効力を争うことはできない。
エ.訴訟上の和解によって訴訟が終了したが、その後その和解の内容である私法上の契約が債務不履行により解除されるに至ったとしても、そのことによっては、一旦終了した訴訟は復活しない。
オ.原告が被告に対し証書真否確認の訴えを提起した場合において、確認の対象となる文書が、法律関係を証する書面に該当しないものでも、被告が口頭弁論の期日において原告の請求を認諾する旨の陳述をし、それが調書に記載されたときは、当該訴訟は終了する。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ
正解:3
ポイント
ア:詐欺・脅迫による取下げは無効→×
エ:判例(最判昭和43.2.15)より選択肢のとおり→○
第44問
簡易裁判所における訴訟手続に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.49])
ア.簡易裁判所は、相当と認める場合であっても、当事者に異議があるときは、証人の尋問に代えて、書面の提出をさせることはできない。
イ.簡易裁判所の判決書に事実及び理由を記載するには、請求の趣旨及び原因の要旨に加え、請求の原因の有無と、請求を排斥する理由である抗弁の要旨を表示すれば足りる。
ウ.簡易裁判所は、金銭の支払の請求を目的とする訴えにつき、被告が口頭弁論において原告の主張した事実を全て争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合において、相当と認めるときは、原告の意見を聴いた上で、当該請求に係る金銭の支払について分割払の定めをして、当該金銭の支払を命ずる決定をすることができる。
エ.原告が被告に対して50万円の支払を求める訴えを簡易裁判所に提起した後に、被告が原告に200万円の支払を求める反訴を提起した場合には、簡易裁判所は、職権で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。
オ.簡易裁判所は、訴訟の目的の価額が100万円である不動産明渡請求訴訟について、被告が本案について弁論をする前に移送の申立てをした場合には、当該訴訟を不動産の所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ
正解:1
ポイント
ア:簡易裁判所は、相当と認める場合には、尋問・陳述に代え、書面の提出をさせることができる→×
エ:この場合、移送は必ず申立てによらなければならない→×
第45問
控訴に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No.50])
ア.控訴の提起は、判決書又は判決書に代わる調書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、控訴状を控訴裁判所に提出してしなければならない。
イ.原告が貸金の返還請求と不法行為に基づく損害賠償請求とを併合して提起した訴えに係る訴訟において、第一審裁判所が原告の請求のうち貸金の返還請求を認容し、その余の請求を棄却する判決をしたところ、被告のみが自らの敗訴部分につき控訴を提起した場合には、第一審判決のうち不法行為に基づく損害賠償請求に係る部分は、控訴期間の満了に伴い確定する。
ウ.控訴人が、控訴状に控訴理由を記載せず、控訴の提起後50日以内に控訴理由書を控訴裁判所に提出しなかった場合には、当該控訴は不適法なものとして却下される。
エ.原告が貸金500万円の返還請求をした訴訟において、被告が500万円の弁済の抗弁と消滅時効の抗弁を主張したところ、第一審裁判所が弁済の抗弁を認めて原告の請求を全て棄却する判決をし、原告が控訴を提起した場合において、控訴裁判所は、500万円の弁済の事実は認められないが、貸金債権全額について消滅時効が完成したという心証を抱いたときは、当該控訴を棄却しなければならない。
オ.原告が貸金800万円の返還請求をした訴訟において、第一審裁判所が原告の請求のうち500万円の返還請求を認容し、その余の請求を棄却する判決をしたところ、原告が控訴期間内に控訴を提起し、その後、被告が自らの控訴期間内に附帯控訴を提起した場合に、控訴人兼附帯被控訴人が控訴審の終局判決前に控訴を取り下げたときは、当該附帯控訴は、控訴期間以外の控訴の要件も備える限り、独立した控訴とみなされる。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
正解:5
ポイント
ア:控訴状を第一審裁判所に提出しなければならない→×
ウ:控訴状には控訴理由を記載する必要はない→×