予備試験過去問(短答)

令和4年度 司法試験予備試験過去問題・解答(短答式_商法)

第16問

発起設立による株式会社の設立手続に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No16])

ア.定款の作成及び認証は、発起人による出資の履行がされた後に行わなければならない。

イ.発起人による出資の履行に先立って、発起人の過半数の賛成により設立時役員等を選任しなければならない。

ウ.公証人による定款の認証を受けた後に、複数の発起人のうち1人を交代させる場合には、再度、定款を作成し、公証人の認証を受けなければならない。

エ.公証人の認証を受けた定款に定めた発行可能株式総数の変更は、その変更後に出資される財産の価額が当該定款に定めた設立に際して出資される財産の価額又はその最低額を下回らないのであれば、発起人全員の同意によってすることができ、再度、定款を作成し、公証人の認証を受ける必要はない。

オ.現物出資をした有価証券について検査役による調査が必要な場合でも、設立時取締役は、当該有価証券について定款に記載又は記録された価額の相当性を調査しなければならない。

1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ


正解:4

ポイント

ア:発起設立の手続きは「定款の作成及び認証」が最初→×

イ:38条「発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならない」→×

ウ:30条「公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第33条第7項若しくは第9項又は第37条第1項若しくは第2項の規定による場合を除き、これを変更することができない」→○

エ:37条「発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる」→○

オ:33条10項では現物出資をした有価証券に市場価格がある場合、正当な価格判断が容易であるため、検査役による調査を不要としている→×

第17問

A株式会社(以下「A社」という。)の支配株主であるB株式会社(以下「B社」という。)は、A社の少数株主Cらの個別の承諾を得ることなく、A社を完全子会社にしたいと考え、そのための手法を検討している。次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、 後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No17])

ア.株式の併合、全部取得条項付種類株式の取得及び特別支配株主の株式等売渡請求のいずれの手法を用いる場合も、A社において株主総会の特別決議が必要である。

イ.株式の併合又は全部取得条項付種類株式の取得の手法を用いる場合において、一株に満たない端数の処理として、その端数の合計数に相当する数の株式を裁判所の許可を得て競売以外の方法により売却するためには、A社の取締役の全員の同意を得る必要がある。

ウ.特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いる場合には、A社の新株予約権についても売り渡すことを請求することができるが、株式の併合又は全部取得条項付種類株式の取得の手法を用いる場合には、A社の新株予約権に取得条項が定められていない限り、その新株予約権を当然には取得することができない。

エ.B社がA社の総株主の議決権の10分の7を有し、D株式会社(B社がその総株主の議決権の3分の2を有している。)がA社の総株主の議決権の10分の2を有しているときは、B社は、特別支配株主の株式等売渡請求の手法を用いることができる。

オ.B社は、A社との間で株式交換契約を締結し、Cらに対価として金銭又はB社の株式を交付することによって、Cらの有するA社の株式を取得することができる。

1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ


正解:2

ポイント

ア:179条の3「特別支配株主は、株式売渡請求をしようとするときは、対象会社の承認を受けなければならない」→×

イ:234条の2「取締役が2人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない」→○

ウ:179条の2「新株予約権の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる」→○

エ:B社は特別支配株主にはあたらない→×

オ:株式交換では通常、親会社の株式が交付されるが、金銭等の交付も可能→○

第18問

株券に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No18])

ア.判例の趣旨によれば、株券としての効力が発生するのは、株式会社が会社法所定の形式を具備した文書を作成した時ではなく、当該文書を株主に交付した時である。

イ.一部の種類の株式についてのみ譲渡制限がある株式会社は、株主から請求があるまでは、株券を発行しないことができる。

ウ.株主は、株式会社に対し、株券の所持を希望しない旨を申し出ることができ、当該株主が所持していた株券は、当該株主が当該株券を当該株式会社に提出した時に無効となる。

エ.株券喪失登録がされた株券は、その登録が抹消された場合又は株式会社が株券発行会社でなくなることにより株券が無効となった場合を除き、株券喪失登録日の翌日から起算して1年を
経過した日に無効となる。

オ.株式会社がその株式に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款変更をしたときは、当該株式会社の株券は、株主が株券を当該株式会社に提出しなくても、当該定款変更がその効
力を生ずる日に無効となる。

1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ


正解:3

ポイント

ア:判例では「文書を株主に交付したとき初めて株券となる」(最判昭40.11.16)→○

イ:215条1項「株券発行会社は、株式を発行した日以後遅滞なく、当該株式に係る株券を発行しなければならない」→×

ウ:217条5項「提出された株券は、株主名簿に記載又は記録をした時において、無効」→×

エ:228条1項「株券喪失登録がされた株券は、株券喪失登録日の翌日から起算して一年を経過した日に無効となる」→○

オ:218条2項「株券発行会社の株式に係る株券は、定款変更の効力が生ずる日に無効」→○

第19問

株主の権利に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No19])

ア.取得請求権付株式の株主は、当該取得請求権付株式と引換えに交付される金銭の額が分配可能額を超えているときでも、株式会社に対し、当該取得請求権付株式を取得することを請求す
ることができる。

イ.単元未満株主は、定款に定めがなくても、株式会社に対し、当該株主が保有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を売り渡すことを請求することができる。

ウ.株主総会において決議事項の全部について議決権を行使することができない株主は、当該株主総会について提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写をすることができない。

エ.会社法上の公開会社において、募集株式の引受人が株主となることによって有することとなる議決権の数が総株主の議決権の数の2分の1を超える場合において、総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が当該引受人による募集株式の引受けに反対したときは、当該公開会社は、当該引受人に対する募集株式の割当てについて、株主総会の特別決議による承認を受けなければならない。

オ.監査役設置会社の株主は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、取締役会議事録の閲覧又は謄写をすることができる。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ


正解:5

ポイント

ア:166条1項「分配可能額を超えているときは取得請求権付株式を取得することを請求することができない」→×

イ:194条1項「単元未満株主が株式会社に対して単元未満株式売渡請求をすることができる旨を定款で定めることができる」→×

ウ:311条4項「株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、第一項の規定により提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写の請求をすることができる」とあるが、310条7項かっこ書きで「全部につき議決権を行使することができない株主」は除かれている→○

エ:206条の2条4項「議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が募集株式の引受けに反対する旨を公開会社に対し通知したときは、株主総会の普通決議の承認を受けなければならない」→×

オ:317条2項、3項「監査役設置会社の株主は、裁判所の許可を得て、取締役会議事録の閲覧又は謄写を請求することができる」→○

第20問

取締役会設置会社の取締役に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No20])

ア.判例の趣旨によれば、会社法上の公開会社でない株式会社において、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によって代表取締役を定めることも、その旨の定款の定めがあれば、許される。

イ.代表取締役は、自己の職務の執行の状況の取締役会への報告につき、6か月に1回、取締役の全員に対してその状況を通知することをもって、取締役会への報告を省略することも、その
旨の定款の定めがあれば、許される。

ウ.判例の趣旨によれば、取締役会を構成する取締役は、取締役会に上程された事柄について監視するにとどまらず、代表取締役による会社の業務執行一般につき、これを監視する職務を有
する。

エ.判例の趣旨によれば、取締役は、株主総会の決議によって当該取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その後の株主総会によってその報酬を無報酬に変更する旨の決議がされた
としても、その変更に同意しない限り、報酬請求権を失わない。

オ.取締役会の決議に反対した取締役は、自己が反対したことを明記していない議事録に異議をとどめないで署名又は記名押印した場合には、当該決議に賛成したものとみなされる。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ


正解:4

ポイント

ア:判例では「取締役会の決議によるほか株主総会の決議によって代表取締役を定める旨の定款の定めも有効」(最決平29.2.21)→○

イ:363条2項「取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。」→×

ウ:判例では「取締役は、代表取締役の業務執行一般について監視」(最判昭48.5.22)するものとされている→○

エ:判例では「取締役の報酬を無報酬とする株主総会決議があったとしても、同意しない限り請求権を失うものではない」(最判平4.12.18)としている→○

オ:369条5項「議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する」→×

第21問

大会社における取締役及び取締役会に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No21])

ア.監査等委員会設置会社における監査等委員である取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までであり、定款又は株主総会
の決議によって、その任期を短縮することはできない。

イ.監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社においては、社外取締役を選任することが義務付けられるが、監査役会設置会社においては、社外監査役を選任することが義務付けられるものの、社外取締役の選任が義務付けられることはない。

ウ.取締役会を招集する取締役が定款又は取締役会で定められている場合でも、監査等委員会が選定する監査等委員又は監査委員会が選定する監査委員は、取締役会を招集することができる。

エ.監査等委員は、監査等委員会設置会社の取締役会において、監査委員は、指名委員会等設置 会社の取締役会において、それぞれ意見を述べることができるが、監査役は、取締役ではないから、監査役会設置会社の取締役会において意見を述べることができない。

オ.監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社の取締役会は、株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備に係る決定を取締役に委任することができないが、指名委員会等設置会社の取締役会は、当該決定を執行役に委任することができる。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ


正解:1

ポイント

ア:332条4項「監査等委員である取締役の任期については、第一項ただし書の規定は、適用しない」→○

イ:327条の2「監査役会設置会社で有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければならない」→×

ウ:399条の14「監査等委員は、取締役会を招集することができる」→○

エ:383条1項「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない」→×

オ:416条2項「指名委員会等設置会社の取締役会は、前項第一号イからホまでに掲げる事項を決定しなければならない」→×

第22問

取締役会設置会社(監査等委員会設置会社を除く。)の取締役の当該会社に対する損害賠償責任に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5まで のうちどれか。(解答欄は、[No22])

ア.取締役が自己又は第三者のために当該会社と取引をした場合において、当該取引によって当該会社に損害が生じたときは、当該取締役は、取締役会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けていたとしても、取締役の任務を怠ったものと推定される。

イ.取締役が自己又は第三者のために当該会社の事業の部類に属する取引をした場合において、当該取引によって当該会社に損害が生じたときは、当該取締役は、取締役会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けていたとしても、取締役の任務を怠ったものと推定される。

ウ.取締役が自己又は第三者のために当該会社と取引をした場合において、当該取締役が、取締役会において、当該取引につき重要な事実を開示せず、その承認を受けていなかったときは、当該取引によって当該取締役又は当該第三者が得た利益の額は、当該取締役の任務懈怠によって生じた損害の額と推定される。

エ.取締役が自己又は第三者のために当該会社と取引をした場合において、当該取引によって当該会社に損害が生じたときは、当該取締役又は当該第三者と当該取引をすることを決定した当該会社の代表取締役は、任務を怠ったことが当該代表取締役の責めに帰することができない事由によるものであることを証明することにより、その責任を免れることができる。

オ.当該会社が取締役の債務の保証をすることその他取締役以外の者との間において当該会社と取締役との利益が相反する取引をした場合において、当該取引によって当該会社に損害が生じたときは、当該取締役は、任務を怠ったことが当該取締役の責めに帰することができない事由によるものであることを証明しても、その責任を免れることができない。

1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ


正解:1

ポイント

ア:423条3項「356条第1項第2号又は第3号の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する」とあり、取締役会の承認があったとしても適用される→○

イ:上記の条文中に該当しない356条第1項第1号では「取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき」とある→×

ウ:423条2項「競業取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する」→×

エ:428条1項「直接取引をした取締役又は執行役の第423条第1項の責任は、任務を怠ったことが当該取締役又は執行役の責めに帰することができない事由によるものであることをもって免れることができない」→○

オ:上記条文より間接取引の取締役は証明することで責任を免れることができる→×

第23問

株式会社を消滅会社とする吸収合併と株式会社を譲渡会社とする事業譲渡に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答 欄は、[No23])

ア.吸収合併及び事業譲渡は、いずれも、株主総会の決議によって吸収合併契約又は事業譲渡契約の承認を受けることを要しない場合がある。

イ.吸収合併の場合には、消滅会社はそれによって当然に解散し、事業の全部の譲渡の場合にも、譲渡会社はそれによって当然に解散する。

ウ.吸収合併及び事業譲渡は、いずれも、訴えによらなければその無効を主張することができない。

エ.吸収合併及び事業譲渡は、いずれも、吸収合併契約又は事業譲渡契約において、会社法所定の事項を定めなければならない。

オ.吸収合併及び事業譲渡は、いずれも、合併対価又は譲渡される事業の対価として交付される財産の種類は金銭に限定されない。

1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ


正解:2

ポイント

ア:784条1項「前条第一項の規定(吸収合併契約等の承認)は、吸収合併存続会社が消滅株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない」→○

イ:471条の解散事由に「事業譲渡」は該当しない→×

ウ:判例では「いつでも誰でも事業譲渡の無効を主張することができる」(最判昭61.9.11)→×

エ:吸収合併する場合は、749条1項より会社法所定の事項を定める必要があるが、事業譲渡の場合そのような規定はない→×

オ:いずれも株式などでも良い→○

第24問

株主総会決議取消しの訴え又は株主総会決議不存在確認の訴えに関する次の1から5までの各記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。(解答欄は、[No24])

1.株主総会決議無効確認の訴えにおいて、株主総会決議の無効原因として主張された瑕疵が株主総会決議の取消原因に該当しており、株主総会決議取消しの訴えの原告適格、出訴期間等の要件を満たしている場合には、株主総会決議取消しの請求を追加する訴えの変更が出訴期間経過後にされても、当該株主総会決議取消しの訴えは、適法である。

2.取締役を選任する株主総会決議(第一決議)の不存在確認を求める訴訟の係属中、第一決議で選任された取締役によって構成される取締役会の招集決定に基づき同取締役会で選任された代表取締役が招集した株主総会において新たに取締役を選任する株主総会決議(第二決議)がされた場合において、第一決議が存在しないことを理由とする第二決議の不存在確認を求める訴えが提起され、第一決議の不存在確認を求める訴えに併合されているときは、特段の事情のない限り、第一決議の不存在確認を求める訴えには確認の利益が認められる。

3.取締役に対する退職慰労金支給の株主総会決議(第一決議)の取消しを請求する訴訟の係属中、第一決議と同一の内容を持ち、かつ、第一決議の取消しが確定した場合に遡って効力を生ずるとされる株主総会決議(第二決議)がされた場合において、第二決議について株主総会決議取消しの訴えの提起等がなく有効であることが確定したときは、特段の事情のない限り、第一決議の株主総会決議取消しの訴えは、訴えの利益を欠く。

4.株主総会決議の取消しを請求する訴訟の係属中、株主である原告が死亡した場合には、株主の株主総会決議取消請求権などの共益権は一身専属的権利であるため、当該訴訟は、原告の死亡によって終了し、相続により株式を取得した相続人が承継することはない。

5.株主総会招集の手続又はその決議の方法に性質、程度等からみて重大な瑕疵がある場合には、その瑕疵が決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所が株主総会決議取消しの請求を棄却することは許されない。


正解:4

ポイント

ア:判例では「訴えの原告適格、出訴期間等の要件を満たす場合、訴えの変更が出訴期間経過後にされても、訴えは適法」(最判昭54.11.16)→○

イ:判例では「民訴法145条1項の法意に照らし、当然に確認の利益が存する」(最判平11.3.25)→○

ウ:判例(最判平4.10.29)は選択肢のとおり→○

エ:判例(最大判昭45.7.15)は相続人が訴訟の原告の地位を承継することを認めている→×

オ:判例(最判昭46.3.18)は選択肢のとおり→○

第25問

剰余金の配当に関する規制についての次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No25])

ア.会計監査人設置会社である監査役会設置会社であって取締役の任期が選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである株式会社は、金銭
による剰余金の配当について取締役会が定めることができる旨を定款で定めることができる。

イ.株式会社は、株主に金銭以外の財産を配当する場合には、株主総会の特別決議により、当該配当財産に代えて金銭を交付することを当該株式会社に対して請求する権利を株主に与える旨
を定めなければならない。

ウ.株式会社が剰余金の配当をする場合には、当該配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を準備金として計上しなければならないものの、配当を行った日における準備金の額が資本金の額の4分の1以上であるときは、これを計上する必要はない。

エ.株式会社が分配可能額を超えて剰余金の配当を行ったときは、当該配当に関する職務を行っ た業務執行者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該配当を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負い、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明してもその義務を免れない。

オ.株式会社が株主に剰余金の配当を行った場合において、配当を行った日の属する事業年度に係る計算書類の承認を受けた時において欠損が生じたときは、当該分配に関する職務を行った業務執行者は、当該株式会社に対し、連帯して、欠損の額を支払う義務を負うものの、定時株主総会の決議によって剰余金の配当を行った場合には、その義務を負わない。

1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ


正解:4

ポイント

ア:459条1項より「剰余金の配当について取締役会が定めることができる旨を定款で定めることができる」→○

イ:454条4項より「株主総会の普通決議」で可能である→×

ウ:445条4項「剰余金の配当をする場合には、株式会社は、剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金として計上しなければならない」→○

エ:462条2項「業務執行者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない」→×

オ:465条1項10号イ「株主総会で剰余金の配当が定められた場合、欠損が生じた場合の責任は生じない」→○

第26問

株式会社の解散及び清算に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No26])

ア.清算株式会社の清算人については、定款で定める者及び株主総会の決議によって選任された者がいない場合には、当該会社に取締役がいるときであっても、利害関係人の申立てにより、裁判所が選任する。

イ.清算人は、清算株式会社の財産がその債務を完済するのに足りないことが明らかになったときは、直ちに破産手続開始の申立てをしなければならない。

ウ.清算人は、清算人会の承認を受けた決算報告を株主総会に提出してその承認を受けた場合には、その職務の執行に関し不正の行為があったときを除き、任務を怠ったことによる損害賠償の責任を免除されたものとみなされる。

エ.代表清算人は、清算株式会社の本店の所在地における清算結了の登記の時から10年間、当該会社の帳簿を保存しなければならない。

オ.株式会社は、株主総会の決議によって解散した時に消滅する。

1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ


正解:2

ポイント

ア:478条1項より「取締役、定款で定める者、株主総会の決議によって選任された者」が清算人となるとある→×

イ:484条1項より本肢のとおり→○

ウ:507条4項「前項の承認があったときは、任務を怠ったことによる清算人の損害賠償の責任は、免除されたものとみなす」→○

エ:508条1項より本肢のとおり→○

オ:476条「清算株式会社は、清算の目的の範囲内において、清算が結了するまではなお存続するものとみなす」→×

第27問

営業又は事業の譲渡に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No27])

ア.営業又は事業の譲渡の効果として、特段の手続を要することなく、営業又は事業を構成する資産及び債権債務は譲渡人から譲受人に当然に移転する。

イ.判例の趣旨によれば、単なる事業用財産の譲渡は、たとえそれが譲渡会社に重大な影響を及ぼすようなものであっても事業の譲渡に該当しない。

ウ.営業又は事業の譲渡が行われた場合に生じる譲渡人の競業避止義務は、譲渡人と譲受人との間の合意によってもこれを免除することはできない。

エ.営業又は事業の譲渡人が、譲受人に承継されない債務の債権者を害することを知って営業又は事業を譲渡し、当該譲受人が、当該譲渡の効力が生じた時までに当該債権者を害することを知っていた場合には、当該譲受人が当該譲渡人の商号を続用しないときであっても、当該債権者は、当該譲受人に対し、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行の請求をすることができる。

オ.判例の趣旨によれば、預託金会員制のゴルフクラブが設けられているゴルフ場の営業又は事業の譲受人が、当該ゴルフクラブの名称を続用しており、当該ゴルフクラブの名称が当該ゴルフ場の営業又は事業の主体を表示するものである場合であっても、当該譲受人は、譲渡人の商号を続用していない限り、当該ゴルフクラブの会員が当該譲渡人に交付した預託金の返還義務を負わない。

1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ


正解:3

ポイント

ア:営業譲渡・事業譲渡は、包括的な契約である合併とは異なり、一個の債権契約に過ぎない→×

イ:判例では「事業用財産の譲渡は、事業の譲渡に該当しない」(最大判昭40.9.22)→○

ウ:当事者間の合意で競業避止義務は免除可能→×

エ:23条の2第1項「譲受会社に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる」→○

オ:判例では「会社法22条1項の類推適用により会員が譲渡人に交付した預託金の返還義務を負う」(最判平16.2.20)→×

第28問

代理商、仲立人及び問屋に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No28])

ア.商人から物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、委託を受けた事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

イ.代理商は、商人のために取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、その商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。

ウ.仲立人は、当事者の一方の氏名又は名称をその相手方に示さなかったときは、当該相手方に対して自ら履行する責任を負う。

エ.問屋は、別段の意思表示がない限り、販売又は買入れにより生じた債権が弁済期にあるときは、その弁済を受けるまで、委託者のために占有する物又は有価証券を留置することができる。

オ.問屋は、委託者の許可を得ない限り、自己又は第三者のために、委託者の営業又は事業の部類に属する取引をすることができない。

1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ


正解:2

ポイント

ア:商法27条「代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないもの)」→×

イ:商法27条「代理商は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない」→○

ウ:商法549条「仲立人は、当事者の一方の氏名又は名称をその相手方に示さなかったときは、当該相手方に対して自ら履行をする責任を負う」→○

エ:商法31条、557条より「占有する物又は有価証券を留置することができる」→○

オ:問屋については競業禁止規定はない→×

第29問

約束手形及び小切手に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No29])

ア.約束手形の振出人は、適法な所持人に対して手形金を支払う手形法上の義務を負うが、小切手の支払人は、支払保証をしていない限り、適法な所持人に対して小切手金を支払う小切手法上の義務を負わない。

イ.約束手形が手形要件の一部を欠く場合は白地手形として有効になり得るが、小切手が小切手要件の一部を欠く場合は白地小切手として有効になることはない。

ウ.約束手形及び小切手は、いずれも満期として一覧後定期払及び日附後定期払のいずれかを選択することができる。

エ.小切手は支払委託に条件を付すことができるが、約束手形は手形金を支払う旨の約束に条件を付すことはできない。

オ.小切手は記名式でない方法により振り出すことができる。

1.ア ウ 2.ア オ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ エ


正解:2

ポイント

ア:小切手法53条1項、55条1項「小切手の支払人は支払保証をすることで、所持人に対して支払義務を負う」→○

イ:小切手法13条より小切手要件の一部を欠く小切手が白地小切手として有効になり得ると解されている→×

ウ:小切手法28条1項より小切手は当然に一覧払いとされている→×

エ:小切手法1条2項より小切手は支払委託に条件を付すことができない→×

オ:小切手法5条より→○

第30問

裏書の連続に関する次のアからオまでの各記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは、後記1から5までのうちどれか。(解答欄は、[No30])

ア.裏書の連続が欠ける約束手形の所持人も、裏書の連続が欠ける部分につき、実質的な権利移転の事実により自己の権利を証明すれば、手形上の権利を行使することができる。

イ.約束手形の受取人欄に「法務花子」という記載があり、第一裏書人欄に法務花子の通称であ る「司法華子」という署名及びその住所の記載がある場合には、当該約束手形には裏書の連続がある。

ウ.約束手形の最後の裏書が白地式裏書であり、それより前の裏書が連続している場合には、当該約束手形の所持人は権利者と推定される。

エ.約束手形の受取人欄に「A」という記載、第一裏書人欄に「A」という署名及びその住所の記載、第一被裏書人欄に「B」の記載、第二裏書人欄に「C」という署名及びその住所の記載、第二被裏書人欄に「D」の記載があるが、第一被裏書人欄の「B」の記載が抹消された場合には、その抹消が権限のある者によってされたことを所持人が証明した場合に限り、第一裏書は白地式裏書となり、当該約束手形には裏書の連続があるものとされる。

オ.約束手形の受取人欄に「A株式会社 法務太郎 支店長」という記載があり、第一裏書人欄に 「法務太郎」という署名及びその住所の記載がある場合には、当該約束手形に裏書の連続があるとはいえない。

1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ


正解:1

ポイント

ア:判例より本肢は正しい→○

イ:本肢の場合、裏書の連続は認められない→×

ウ:約束手形の所持人は適法な権利者とみなされている→○

エ:記名式裏書の被裏書人欄の記載のみの抹消は白地式裏書になると解されている→×

オ:判例より社会通念上、同一人物と認められる場合、裏書の連続が認められる→×

-予備試験過去問(短答)